エピローグ

 白に過去を話した数日後。前回の映画のリベンジということで白と大翔と瑠実は映画館を訪れていた。



「たまにはファンタジー系の映画もいいな」


 白が楽しそうに笑いながら言う。その様子に、瑠実はほっと胸をなでおろした。今回は自分の観たい映画を選んだため、白に無理をさせていては申し訳ないと思っていたのだ。


「最後、魔法使いと魔王が闘うシーンは迫力ありましたよね」


 大翔も満足そうにそう頷く。瑠実は自分の頬が緩むのを感じた。


「今度は白君のオススメの映画を観に行きたい」


 瑠実の言葉に大翔が「ええ!?」と大きな声を出す。その驚き様に、瑠実は軽く口をとがらせた。


「あたしがミステリーとかサスペンスを観たいのって、そんなに変?」


「いや、変じゃないけど……あんなに殺人事件がテーマになっているのを嫌がっていたじゃん」


 どこか心配そうな目で瑠実を見る大翔。


 確かに、以前までは殺人描写のあるストーリーが苦手だった。自分が人を殺めた経験があったということもあり、嫌でも過去を思い起こさせたからだ。


 しかし、今はもう大丈夫な気がした。白の言葉が、大翔の言葉が、瑠実を前に進ませたのだ。


 瑠実は大翔にいたずらっぽく笑いかける。 


「もう、乗り越えたの。あたしの罪は、白君が許してくれたから」


 大翔は目を丸くする。そして無理した様子でもない瑠実に、柔らかく微笑んだ。白はどこか照れたように顔を背けている。


 そんな白を見て、瑠実は白の耳元へ顔を寄せ囁いた。


「ありがとうね。白鳥になったアヒル君」


 距離の近さからか、白は耳を赤くさせる。しかしその内容にはどうにもツッコミたいらしく、「なんだよ、白鳥になったアヒルって……」と小さく呟いた。


「あはは、白、耳真っ赤だよ」


「こら、瑠実。先輩をからかうのも程々にしろよ。先輩、ウブなんだから」


 大翔はそう楽しそうに笑うと、白の脇腹を肘でつつく。白は「お前もからかうな!」と大翔を軽く睨んだ。しかし、そう言う自分もおかしくなったのか、大翔と目を合わせると互いに笑い合う。瑠実もそれにつられて笑った。


 ――犯した罪は決して消えない。しかし、味方でいてくれる人と一緒に地獄に落ちてくれる人がいれば、もう怖いものはない。


 瑠実は、もうあの悪夢をみないような気がしていた。

 

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探偵とヘンゼルとグレーテル 猫屋 寝子 @kotoraneko

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