くそったれが
死神王
本編
学校の屋上は「進入禁止」の看板があるだけで、案外警備は薄いもので、深夜に忍び込むのはそこまで難しいものでは無かった。
鍵の開いた屋上のドアをあけ、看板の下をくぐり抜けると、夜の空が出迎えると共に六月特有の蒸し蒸しとした不快な風が首周りをすうっとつき通って行った。
「最後まで祝福されないなぁ。」
そんな事を言いながら私は屋上の端へとゆっくりあるいた。
歩く途中、何となく空を見上げてみると、そこには星空が点々と光っていた。
双子座がとてもハッキリと見えて、靄すら一つなく、満開の夜空で、それはもう人生で一番輝いていると言っても過言じゃなかった。
「私もあんな風にキラキラ出来たのかな。」
零れた言葉で、何となく今までの人生が思い出させる。そうすると、自然と足は端まで辿り着いた。
試しに端に座ってみる。
そうすると、不快な風がふくらはぎの裏を通り、自然と嫌な湿気が溜まっていった。でも、今日はそんな事を気にする事もなく、ただただ足下の先を眺めて、呆然としていた。その先には何も見えない暗闇が染まっていた。
もし、落ちてしまえば、地面に着くことなく、暗闇の中に閉じ込められてしまいそうで、
「なんか怖いね。」
無意識に言葉を発しながら、私は足をぶらんぶらんと振った。
もし、このまま落ちてしまえば、どうなるのだろうか。案外、木に引っ掛かって助かったりするのだろうか。駆け出したら、風に飛ばされて、魔法の世界とか異世界とやらに行けたりしないだろうか。いや、そんな事はある訳ない。わかってる。だけど、その言葉を意識する事がこの期に及んでまだ恐ろしかった。
しばらく座っていると湿気のせいで、首筋にじんわりとした汗が滲み出てきた。
「最後くらい綺麗でいたいものね。」
私はスカートのポケットから白色の小さなハンカチを取り出し、軽く首元を拭き取った。白いハンカチは私の汗を含んで、少し
「あんまり長居しても意味は無いし、もう始めますか。」
私は立ち上がり、決心をした。全身に不快な風が強くなってくる。髪の毛や服が風で揺らぐ。あまりの強さで反射的にスカートを抑えた。
「スカートやめときゃ良かったかな。」
これが最後の言葉か。
まあ、いいか。
くそったれが 死神王 @shinigamiou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます