第11話 聖ヨルダル教会に戻って餌をやると

教会の外で、オリハルコンをテラサに食べさせた。

闇属性で王の刺客、アポピスに進化した。下半身は蛇のままだが、上半身は人間の姿をしている。テラサの青い髪は黒い髪に染まっている。

冥府の神に気に入られている。

目は赤いまま。

いいペットに育ってきたわ。

「どう少し人間に近づけたじゃない」と、わたしはテラサに語る。

「はい、ありがとうございます。リズ様」

「悪魔とののしっていたのに、わたしの名前をちゃんと言えるじゃない」

「……今でもその気持ちは変わっていません」

「あらそう」と、わたしはテラサを死霊しりょうの森へ転移させる。

「よかったのか?」と、ヨルは聞いてくれる。

「まあねぇ。そろそろ独り立ちさせないとね」

「そうか。今日も聖書がうまいな」

マリアンヌがやって来る。

「鉱山、あなたたちしか入れませんけど…魔物たち倒してくれないんですか?それを依頼にしてもいいんですよ」

「100匹以上いるわよ、そんなに金貨払えるの?」

「くっ。では近隣の村にゴブリンたちが異常発生しています。ゴブリンの変異種またはゴブリンロードも発生している可能性があります。またはそれを操るヴァンパイアの可能性も…それともあなた達の指図ですか?」

「ふぅ~魔物の王に魔物を倒せ?冗談じゃないわ。かわいいかわいい眷属たちをどうして倒さなきゃいけないのよ」と、わたしは怒ってたふりをしてみる。

「だっ、そ、それは人間を守ってくださいよ。この教会で暮らして行くんでしょ。タダでとは言わせませんよ。それにゴブリンたちは金貨50枚と相場があります。異常発生が終了し、被害がゼロと報告されて初めて支払いもできます。どうかお願いします。この案件は他の冒険者ギルドにもお金を払っているんです。その参加者のほとんどが帰って来ていません。よって成果報酬を2倍にまでなら払えます。金貨100枚これ以上は払えません。どうですか?」

「ふーん。まあ、ゴブリンを操っているのはヴァンパイアかもしれないわねぇ。というか、眷属のやる事ならだいたい戦う前からわかるのよねぇ。うん、まあ、ヴァンパイアになりたての新米が”わたし”が消えたと勘違いして復活させようとしているみたい。そのために血とにえを集めてくれているみたいだけど、まだまだとてもとても足りないわねぇ。”わたし”を召喚するには。召喚できても1分ほどぐらいかしら。」

金髪をかきあげながら

「ななな、ちょっとそこまで分かっているなら早く何とかしてくださいよ。」と、わたしの胸倉をつかんで来る。

「金貨をちゃんと用意しておきなさい」と、”わたし”は目を造るのを止める。虚無の眼孔。黒髪は金色に光る髪。そう、金色に光るのだ。

「ひぃ」と、マリアンヌは飛びのく。壁を触り、がたがたと震え出す。

尿を漏らしたようだ。

「マリアンヌ?わらわを誰か忘れるなよ」と、”わたし”は言葉を残す。

わたしはヨルの腕をつかみ、転移魔法陣を起動させる。


マロン村、今まさにゴブリンたちの大軍勢によって襲われようとしていた。ほんの数分黙って見ていれば、村は滅び、わたしのためのにえが用意される。そう考える事もできる。”わたし”は青いドレスを着て大地に足をつけた。


”わたし”が自らの意思で大地に足をつけた。


ゴブリンたちがわたしの前に跪いて道を作る。


リズ・ブライアたる”わたし”が。


ゴブリンマジシャン、ゴブリンロード、新米のヴァンパイアも後方でわたしを見て跪いている。


マロン村???そんな村は知らない。わたしは仮にも魔王なのだから。

大地に足をつけた瞬間。

その命を影から伸びる手で刈り取った。


跪いているゴブリンたちも数人、首を刈り取って、心臓をもぎ取り、飲み干した。


首謀者のヴァンパイアは顔を潰して、ワイングラスに注いでやった。

死ぬ直前までとても嬉しそうにしていた。


マロン村…魂が純粋なモノだけを残して、アンデットを100体ほど配置させて、共に暮らすよう命じた。

魔物と人間が共に暮らせるのか?


わたしとヨルのように…ええ、きっとできるわ。

村の名前は「マロン・ブライア村」と改名させた。

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元勇者と一緒に暗殺業してます、わたし。 グイ・ネクスト @gui-next

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