第10話 待ち構えていたのは

鉱山に設置されている空間転移の先は


灼熱の谷、レゾンバレット。どろどろに溶けたマグマがそこかしこに流れている。転移先はマグマの河の上。

かつ、赤き竜からの白色の炎のブレスがお見舞いされる。

まあ、わたしには。わたしたちには関係ないけどねぇ。

わたしたちは避けようとすらしない。

炎のブレスを8つほどの魔法陣を発動させて、吸収する。

目は造らない。がらんどうの瞳孔。髪は金髪に染まり、青いドレスを着る。わたしはリズそのものに戻る。

ヨルも黒き狼となりて、目は真っ赤に燃えている。わたしたちはマグマの河の上をなんなく歩く。歩きながらマグマを凍らせていく。

いいえ、熱を吸収しているだけ。

竜族に教えてやらねばならない。

わたしたちが何者なのか。


赤き竜。竜族の王なのか、頭には三本の巨大な角が生えている。

目も赤く、こちらを睨んでいる。

トカゲによく例えられるが、竜族はさらに進化した存在。

コモドオオトカゲ当たりが近い外見であろう。

それでいて、顔だけでも像を10頭丸飲みできるだけの大きさだ。

首は長く、背中には四枚の翼を生やしている。プテラノドンという恐竜の翼に近いかもしれない。

とにかく大きい。わたしたちの100倍はかるくある。

見上げてやっと目線が合う程度だ。

『貴様らは何だ?』念話だ。威圧、魔王覇気という技だろうか。愚かなことだ。

「わたし?わたしはわたしよ」と、念話には念話で返す。覇気を上乗せして、威圧する。

『ぐぅ。念話で返してきただと。魔力はわれと同じ?いや、それ以上だと言うのか!いや、あなたたちは!』威圧に負けた赤き竜は身体を縮めこまらせて、ぶるぶると震え出す。

「すっかり冷えてしまったわね」と、わたしは灼熱の谷を見渡す。

今となっては凍結の谷に改名した方がいいくらいだ。

『お、お許しを。お許しぉおおおお』

パチンと、指を弾く。

灼熱の谷に本来の炎、炎の精霊たちが戻ってくる。大精霊も祝福している。そう、ここは灼熱の谷。本来、そういうところだ。

『あ、あう。あうあー』と、赤き竜は空を見上げる。

「ブレスを吸収された時点で降伏してもよかったと思うけど、まあいいわ。それよりもオリハルコンよ、渡したく無いのはわかるけど、オリハルコンの採掘者をわたしが認めた者にだけ採掘させる。ねえ、それで手を打ってくれないかしら」

『いえ、それよりも…。貴女様あなたさまの召喚獣として血の契約を結んでいただければ嬉しいです。それであるならば我ら竜族は安泰です』

「ヨル、一緒に血の契約結んでくれる?」

「もちろんだ」

「……」嬉しい。わたしは思わず、黒き狼になったヨルに抱き着く。

わたしたちはそれぞれ血をたらし、赤き竜と契約を結んだ。

契約はもちろん、支配。

これでオリハルコンは取り放題ねぇ。というか、鉱山は魔物だらけねぇ。高濃度の魔素と鉄の融合。それに金と銀がさらに混ざり合ってオリハルコンになっていくみたいねぇ。またはミスリルからオリハルコンに進化するパターンもあるみたいだけど。

どっちみち人間が入れる鉱山じゃないんだけど、どうするヨル?

【入らなくていいだろう。オリハルコンが欲しいならリズか、おれに頼むしかない】

それもそうね。そうしましょう。テラサに一つ上げたいから一つ貰って帰ってもいいわね。

【好きにしろ。オレたちしか採れないのだから】

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