第9話 聖ヨルダル教会に戻って来て
聖ヨルダル教会に数日前から人がよく集まっている。たぶん原因はわたしたちのせいなのでしょうけど。わたしは髪を魔力操作で黒く染めて、目は翡翠の目を形作る。わたしこそが、
そう言えば今日もあの修道女マリアンヌに呼び出されている。祈りの部屋、そこにマリアンヌはいる。部屋に入ると大きな十字架に向かってマリアンヌは祈りを捧げていた。
「それで、マリアンヌ。今日はどんな依頼なの?」
マリアンヌは後ろを振り返り、
「落盤事故の起きた鉱山に魔物が住み着いたみたいで。その魔物の調伏か、退治をお願いします」と、言ってくる。
「その鉱山はまだ使用されているの?」
「はい、まだ使用できる鉱山ではあるんですけど、住み着いた魔物を倒せ無くて今は未使用ですわ」
「へぇ。その魔物強いのね。」
「調査に行った者が一人も帰っていないので、正体は分かりません。どうかお願いします」と、マリアンヌは頭を下げてくる。
「頭を上げて。ねえ、ヨル。魔族の頂点と人間の頂点がここにいるのよ」と、わたしはヨルを視る。相変わらず聖書を食べている。もう、そんなにおいしいの?とわたしはヨルを見つめる。
「鉱山から採れるのは、オリハルコンなんです。それも関係しているのかもしれません」
「そう。」わたしは話半分で頭に入ってこない。ヨルがこちらを視る。
「リズ、どうした?」
「あの?聞いてます?」と、マリアンヌはこちらを覗き見てくる。
「……」わたしはヨルに見つめられた事にちょっとドキドキしている。
「リズ・ブライア様!」と、修道女マリアンヌは叫ぶ。金髪の髪を揺らしながらも。ちょっと怒っているように見える。
「は、はいぃいい」と、わたしは答える。
「鉱山の場所はここ教会から北へ5キロです。よろしいですね」
「え?ええ。さっそく行ってくるわ」
わたしはさっとヨルの腕に自分の腕をからませ、教会を出た。ペットのテラサは結界の中で大人しくしているようだ。いや、こちらを睨んでいる。腹でも減ったのかもしれない。わたしはマジックボックスから鳥のから揚げを取り出して放り投げておいた。テラサは見事にキャッチする。そしてそのまま飲み込む。それが面白く、ついついから揚げを多めに投げた。
目をつぶり、聖書を食べているヨルの左胸に手を置いて話す。
「鉱山の落盤事故?ヨル、知ってる?それともお父様なら知ってる?」
【うむ。竜族であろうな。それも入口に空間転移魔法陣を設置しておる】
「それほどオリハルコンは重要なの?」
【そりゃ重要じゃよ。自分たちを傷つける事のできる金属じゃからな】
「竜族も大変ねぇ。ヨル、どうする?」
【…リズか。鉱山の周囲には魔法制御は特にない。そこまでなら転移して近づけばいい。相手の空間転移にわざわざハマってやろう】
「うふふ。そうね、話せて嬉しいわ。竜族が相手なら元の姿に戻るわね。ヨルもブライアの、フェンリルの身体を使って戦って。そうしないと灼熱のマグマに焼かれて終わってしまうわ」
【わかった。リズが
「じゃあ、転移しましょう」わたしは小指から血をたらす。
本当はこんな事しなくてもいいんだけど、血を使用した方が正確な空間転移を発動させる事ができる。ブライア家の血筋、血の魔法陣。
北へ4.9キロ。
わたしたちは赤い光に包まれて飛び立った。
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