とても共感させられちゃう〝最凶最悪の邪悪〟

 お隣に引っ越してきたご家族のお子さんを、どうにか食べちゃえないか(性的な意味で)と画策する、とある成人女性のお話。

 ちょっぴりインモラル、かつアンモラルな、現代ものの掌編です。

 最高でした。何が好きってもう主人公の女性が。
 序盤、身の上を語れば語るほど消滅していく、何か人として大事な倫理観のようなもの。怠惰でだらしがなくて「我慢・忍耐」というものを一切知らず、なのにどうも基礎スペックが相当優秀なのか、「なんとなく」でひょいひょいと世の中を渡っていけている感じの女性。
 なのに決して奢らず調子に乗らず、むしろどこかケチ臭く小心な部分があって、このままじゃ将来どうにもならないであろうことをうっすら理解しながら、でもそのへん全部ほったらかしにして目先の「とりあえず」の快楽だけに生きている。

 たまりません。こんな人、もう好きになるなという方が無理というもの!

 本当に邪悪そのものの人間なんですけど、それを冷静に自覚したうえで微塵も反省しないし止まる気もない、その姿に憧れに似た共感すら覚えてしまいます。
 主人公の言動に対しての感想として、「オイやめろ馬鹿いい加減にしろ」と「いいぞー! それでこそお前だ! 行けー!」が同時に来るこの感覚……!

 ざっくり言ってしまうのであれば、「頭のネジの飛んだ危ない人の頭の中を覗く」的な楽しみのあるホラー、みたいな魅力だと思うのですけれど、個人的にはそんな形容の枠にはとても収まらなかったお話。
 いろんなフィクションで見てきた〝魅力的な悪役〟、そこに肩を並べるだけの魅力を持った〝真の邪悪〟によるピカレスク・ロマンス小説です。
 とても最高だったのでもう本当におすすめ! 気になった方は是非とも読んでみてください。