第2話
彼女が夜の街に繰り出したらしい、というのを、街の哨戒班が律儀に教えてくれた。
今、会いに行くことはできない。
街の景色は、夜。静かで、人通りもない。信号の灯りと街路灯が、明滅している。意味もなくネオンが光っているので、暗くはなかった。
彼女は、普通だった。何もかもが普通で。それが心地よかった。常に死線のど真ん中にいる自分とは、真逆。自分がこうなるまでに落としてきた人間的なものを、すべて持ち合わせていた。
だからこそ、会うことはできない。
常に死と隣り合わせの自分に、彼女は、あまりにも大きすぎる。それに、任務に支障が出る可能性もあった。彼女は、自分の弱点になりうる。彼女の普通を、壊すことが、あってはならないと思う。
まだ、自分は生きている。そして、彼女に、会いたいと思う。今は、とりあえず、それだけで充分だった。街の景色に、夜に、まだ彼女はそこで待ってくれている。
街の景色、夜。彼女はいない。
街の景色、夜 (短文詩作) 春嵐 @aiot3110
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます