第2話 わかりましたわ。致しましょう、婚約破棄
0:前作から6年後
ユーリ:マリア・ルーシェ!今日こそ僕は君との婚約を解消するっ!
マリア:まあ殿下、本日もご機嫌麗しゅうございます
ユーリ:何暢気(のんき)に挨拶してるんだ!お茶をすするな手を止めろ!
エマ:恐れながら殿下、お嬢様のマナーは完璧でございます。お茶をすするなど、もってのほか。お茶を口にする、あるいは口に含むが正解かと
マリア:それと殿下?いくら婚約者を訪ねてきたからといって、ノックもなしに部屋を開けてはいけませんわ。私が着替え中でしたらどうしますの
ユーリ:なっ!き、着替えだと!?
エマ:お嬢様、淑女が寝室以外で着替えなど許されません
マリア:あら、でも殿下がわざと私のラッキースケベを狙ってこのような行動を起こしているのなら、私今すぐにでもストリップ出来ましてよ?
ユーリ:ストリップゥ!?
エマ:お嬢様、どこでそのような言葉を覚えてきたのですか
マリア:あらエマ?私この世に生を受けて早26年ですわ。これだけ長く生きていれば見識(けんしき)も深まるものでしょう?
エマ:深めなくてよい知識もございます
ユーリ:だーっ!僕を無視するなぁ!!僕はそんな話をしに来たわけではないっ!相変わらず話をはぐらかすのが天才的に上手い家だなここは!
マリア:殿下?もうすぐ16歳の成人の儀を迎えられる御仁(ごじん)がそのように地団太踏んで床を踏み鳴らしてはいけませんわ。可愛すぎて食べたくなってしまいます
ユーリ:なっ!
エマ:お嬢様、心の声が漏れております
マリア:あら、私としたことが
ユーリ:つ、ついに本性を見せたなマリア・ルージュ!散々僕を幻影や魔術でかどわかし最終的に国を乗っ取ろうと画策していたようだが…僕には初めからお見通しなんだ!でもまさか君が悪食(あくじき)だったとは!予想以上の悪魔だったな!
エマ:恐れながら殿下、先ほどのお嬢様の発言は比喩にございます
ユーリ:ふん!今更取り繕ってももう遅いんだ!王太子の僕を食べてしまえばこの国が手に入ると思ったか!しかし悪食か…なるほど納得だ
マリア:と仰いますと?
ユーリ:だって君のその肌の艶!唇の色!長すぎる睫毛!どこをどう見たって…ギリシャ神話の美の女神、アフロディーテそのものじゃないか!
マリア:まぁ!あのアフロディーテ様になぞらえて頂けるなんて…そのようなお言葉、私にはもったいないですわ
ユーリ:大方、日夜人肉(じんにく)を食してその美貌を保っているのだろう!?いったいどれだけの血肉が君の身体に流れているのか知れないなっ!
エマ:恐れながら殿下、肉といえばお嬢様は鶏と豚と牛しか口になさりません
マリア:あら私、鴨も羊もいけましてよ?
エマ:失礼いたしました
ユーリ:嘘だ!だったらなぜこんなにも光り輝いて見えるのだ!髪だって透き通るような金色でっ!こんな人間、いるほうがおかしいんだ!
エマ:それは殿下がお嬢様に懸想(けそう)なさっているからでございます。お嬢様は確かにお美しいですが、発光できる人間などこの世にはおりません
ユーリ:懸想だと!?僕がこんな悪魔に心を支配されているというのか!
エマ:恐れながら
ユーリ:お前絶対恐れてないだろ!恐れながらって言っとけばなんでも通ると思うな!
マリア:…殿下?殿下は本当に私との婚約解消をお望みなのでしょうか?
ユーリ:え?…当たり前だろう!僕はいずれこの国を背負って立つ人間なのだ。君のような人間に傀儡(かいらい)にされるわけにはいかないのだ
マリア:そうですか……では仕方ありません、婚約、解消いたしましょうか
ユーリ:え
エマ:お嬢様?
マリア:殿下が婚約を取り消したいと言い出されてから早6年…その間私からだけではなく王や王妃様、大臣公爵いろんな方が殿下の説得を試みたのです。でも殿下の御心は変わりませんでしたわ。殿下ももうすぐ成人の儀を迎えられる年齢ですし、ご自身のことはご自身で決めてもよいかもしれません
ユーリ:婚約を解消してくれるのか?
エマ:お嬢様、よろしいのですか
マリア:仕方ありませんわ。片方が望まない結婚など不幸でしかありませんもの。取り急ぎ殿下、今日はこちらで失礼させていただけませんか?私、心の整理をつけたいのです
ユーリ:ああ、わかった…今日は失礼する。突然の訪問すまなかった
マリア:さようなら、殿下
0:ユーリ退場。
エマ:お嬢様、本当によろしかったのですか
マリア:6年間も婚約解消を望まれていたのよ?そろそろ折れてあげなくては
エマ:繋ぎとめる方法などいくらでもございましたよ。婚約を機にルーシェ家が王宮に援助した金額は国家予算の3年分はくだりません
マリア:そうねぇ。婚約が決まったあの頃は本当に…穀物が育たなかったから
エマ:婚約解消ともなれば慰謝料だって莫大な金額になるはずです。殿下はそのことをご存じなのでしょうか
マリア:知っていたらきっと、あれだけ国のことを思うお方ですもの。泣きながら謝って婚約解消を解消なさったでしょうね
エマ:わかっていて黙っていたのですか
マリア:だってそれは全て私の価値では無いもの。お金でユーリの心を買う真似はしたくないわ
エマ:お嬢様…殿下の名前を口にされるとき、ご自身がどんな表情をなさっているかわかっていますか
マリア:…知ってるわ。私が何年、ユーリのことを想っていると思って?
エマ:…13年になると記憶しております
マリア:エマ、あなたの記憶力は本当に素晴らしいわね
エマ:……お嬢様、本当に殿下を諦めてしまってよろしいのですか
マリア:あら?私、諦めるだなんて言ったかしら
エマ:え?
マリア:エマ、遠い東の国の言葉を知ってる?「押してダメなら引いてみろ」って言うんですって
エマ:お嬢様…そのような黒い笑みは淑女には相応しくありませんよ
マリア:あらいけない、王妃教育を受け直さなきゃならないかしら
エマ:……それは殿下を捕まえてからにいたしましょう
0:3日後。ドアをノックするユーリ。
ユーリ:マリア、入ってもいいか
0:返答はない。
ユーリ:…マリア?失礼するぞ?
0:ドアを開けた先、応接室はがらんとしている。
ユーリ:マリア?いないのか?
エマ:恐れながら殿下
ユーリ:わぁ!いつからいたんだエマ!びっくりするじゃないか!
エマ:先ほどからずっとスタンバっております
ユーリ:スタンバるってなんだ!…ところでマリアは?
エマ:お嬢様はおりません
ユーリ:いない?どこかに出かけているのか
エマ:お嬢様は殿下からの婚約解消の申し出があった後すぐ、修道院に行かれました
ユーリ:修道院?なんでそんなところに
エマ:……それと、恐れながら殿下
ユーリ:もう恐れなくていいよ、絶対恐れてないだろ君。…なんだ
エマ:…お嬢様をマリアなどと呼ぶのはおやめ下さい。まだ非公式ですが、双方同意のもとで婚約解消なさった間柄の女性を呼ぶには不適切な呼び方です
ユーリ:…わかった。ルーシェ嬢はいつ戻る
エマ:私にはわかりません
ユーリ:わからない?何故だ。君はマリ…ルーシェ嬢の侍女だろう
エマ:そう…でしたね
ユーリ:でした?過去形?君は何を言っているんだ
エマ:殿下。殿下はお嬢様が何歳かお分かりですか
ユーリ:なんだいきなり。僕がもうすぐ16なのだから彼女は26になる年齢だろう。それがどうした
エマ:であれば察していただきたいのですが
ユーリ:だから何をだ。もってまわった言い方はよせ
エマ:殿下は26の女性が婚約解消を言い渡されたら、その後どうなるかご存じですか
ユーリ:その後?
エマ:貴族同士の結婚は早いです。生まれながらに相手が決まっているケースも少なくありません。そこに26歳の、しかも王太子から婚約解消を言い渡された行き遅れが出てきて…どうして無傷でいられましょう
ユーリ:な…
エマ:何を驚いているのですか。…お嬢様は修道院に行かれました。これが全てでございます
ユーリ:まさか…それはつまり…
エマ:私の口からは以上でございます
ユーリ:何故だ。彼女はあんなにも美しい女性なんだぞ。いくら貴族の結婚が早かろうか、引く手数多だったはずだ
エマ:世間はそうは思いません
ユーリ:彼女は…出家したと言いたいのか
エマ:私の口からはとてもとても
ユーリ:そんな…!だって…彼女はあんなにも美しくて、聡明で、優しくて
エマ:そんなお嬢様を傷物になさったのは殿下御自身です
ユーリ:そんな
エマ:殿下、お引き取り願えますか
ユーリ:な
エマ:私、今殿下の前で気丈に振舞う自信がございません。侍女という立場を忘れ、貴方様に危害を加えてしまうかもしれませんので。……どうか、お引き取りを
ユーリ:あ、ああ
0:屋敷を締め出されたユーリ。
ユーリ:そんな…マリアが出家?なんで…僕はただ、一国を担う存在が心をかき乱されてはいけないと思って…彼女の前だと息を吸うのも苦しくて…なのに…なのに
ユーリ:嫁の貰い手が無い?…あり得ない。マリアはあんなに美しいんだぞ。例え魔術に傾倒していようとも、欲しいと思う男はごまんといるはずだ
ユーリ:…いや…マリアが他の男に嫁ぐ?そうか、僕と婚約解消したのだからそれが自然だ。事実、僕もそう思っていた。なのに、他の男の隣で笑っているマリアを想像して…どうしてこんなにも胸が張り裂けそうなんだ
ユーリ:マリアがいなくなれば平穏な心を取り戻せると思っていたのに…なぜ?彼女が出家しようと他の男のもとへ嫁ごうと、僕にはなんら口を出す権利はないのに…それなのに
ユーリ:さようならってあの言葉は…今生の別れのつもりだったのか……マリア…
0:うなだれた様子の殿下を窓から眺めながら電話をするエマ。
エマ:「はい、お嬢様。殿下はそれはそれはもう沈んだお顔をしていらっしゃいます。私、吹き出すのをこらえるのが辛くて早々に追い出してしまいました」
マリア:「まあエマったら。悪い人ね」
エマ:「お嬢様にだけは言われたくございません。殿下、てっきりお嬢様が出家なさったとお思いですよ」
マリア:「あら、あなたそんな嘘をついたの?」
エマ:「いえ、私は「お嬢様が修道院に向かった」「帰宅時間はわからない」とお答えしたまででございます。何ら嘘は申し上げておりません」
マリア:「そうねぇ。修道院の炊き出しボランティアはいつ終わるかわからないもの」
エマ:「これからどうされるおつもりですか」
マリア:「どうもしないわ」
エマ:「というと?」
マリア:「エマ。私、これでも怒っているのよ。あんなにお慕いしているのに婚約解消を言い続けた殿下に、とても腹が立っていますの」
エマ:「お気持ちは理解できます」
マリア:「だからね、私からは折れて差し上げないわ。私は2、3日の間、のんびりと炊き出しのお手伝いをして過ごそうと思うの」
エマ:「殿下はどう行動されるでしょうか」
マリア:「知らないわっ!……私からは折れませんわ」
エマ:「つまり、殿下から折れていただきたいのですね」
マリア:「知ーらない」
エマ:「お嬢様、殿下が折れましたらまた王妃教育を受けていただきますね。言葉遣いが少々、乱れておりますよ」
マリア:「ふふっ。じゃあ私の可愛い王子様が迎えに来るまで、のんびりさせていただくわ」
エマ:「承知いたしました」
0:その夜、13歳のマリアと初めて会った13年前の夢を見たユーリ。
ユーリ:ユーリ・ボストアニアです。お初にお目にかかりましゅっ
マリア:まあ、なんて愛らしい。私、マリア・ルーシェと申します。ユーリ殿下はおいくつでいらっしゃいますか?
ユーリ:さ、さんしゃいです!
マリア:まあまあ!3歳ですのね!もう数を数えることができるなんて…とても可愛らしくて賢いのですね!
ユーリ:マリアしゃま
マリア:はい殿下、なんでしょう?
ユーリ:マリアしゃまの髪はどうしてこんなにも綺麗なんでしゅか?
マリア:まぁ!私を綺麗だとおっしゃって下さるのですか?
ユーリ:はい!金色で、とてもきれいです!
マリア:まぁまぁまぁ!!
ユーリ:僕…マリアしゃまみたいな人と結婚したいでしゅっ
マリア:ま、まぁぁぁぁぁ!!
エマ:お嬢様、レディがそのような叫び声をあげてはいけません
マリア:エマ、聞きまして?こんなに愛らしいプロポーズは私、初めてですわっ
ユーリ:マリアしゃまは僕と結婚してくれますか?
マリア:ええ!ええ!もちろんですともっ
エマ:お嬢様、そのような口約束は
マリア:いいじゃありませんか!私決めましたわ、殿下に身も心も捧げると
エマ:えええ…?旦那様たちに無断でそのような事
マリア:ユーリ殿下?私をお嫁にもらってくださいますか?
ユーリ:よろこんで!!
エマ:えええ…
0:朝、目を覚ましたユーリ。
ユーリ:はは…はははっ……言い出したのは、僕の方じゃないか…
0:2時間後、身一つでルーシェ家に乗り込んだユーリ。
ユーリ:エマっ!いるかっ!
エマ:殿下…どうしたんですか、こんなに朝早く
ユーリ:マリアの居場所を教えてくれ
エマ:殿下……お嬢様のことはもう、マリアと呼ばないでくださいとご忠告したはずですが
ユーリ:この通りだ!頼むっ
エマ:殿下…お止めください、一介の使用人に頭を下げるなどと
ユーリ:この空っぽの頭などいくらでも下げよう。マリアにもう一度会えるのならば、僕は何度でも頭を下げよう
エマ:おやめください殿下っ!王族が、そんなむやみに頭を下げてはなりませんっ
ユーリ:この通りだ!マリアの居場所を教えてくれ!!
エマ:……はぁ…しょうがないですねぇ
ユーリ:教えてくれるのかっ!?
エマ:今馬車をご用意いたします、しばらくお待ちいただけますか
ユーリ:もちろんだ!
0:馬車を手配しがてらどこかに電話するエマ。
エマ:「お嬢様」
マリア:「まあ、どうしたの?エマ。まだ9時よ、朝が早すぎるわ」
エマ:「まだ寝ていらっしゃたのですか。私の目が届かないからって自堕落(じだらく)に生活なさっていますね?」
マリア:「そ、そんなことはないわ」
エマ:「お嬢様、その生活…もうそろそろお終いになりそうですよ」
マリア:「え?」
エマ:「今しがた、殿下が屋敷にいらっしゃいました。お嬢様に会いたいと、私に頭を下げたのです」
マリア:「まぁ!まぁぁ!」
エマ:「お嬢様、電話口でそのようにはしゃがないでください」
マリア:「あ、あら…私としたことが」
エマ:「今から馬車で殿下と修道院に向かいます。よろしいですね」
マリア:「も、もう!しょうがないわねっ」
エマ:「喜びが溢れておりますよ」
マリア:「丁重にお連れしてね?元とはいえ私の大事な婚約者様ですから」
エマ:「ええ、そのうち現婚約者に返り咲くでしょうけどね。…それでは、顔を洗って支度なさってくださいませ」
マリア:「ふふっ!わかったわっ」
0:電話を終えてため息をつくエマ。
エマ:疲れた…事が収まったら特別ボーナスをいただかなくては
0:数時間後、馬車でマリアの待つ修道院に到着したエマとユーリ。
ユーリ:エマ、無茶を聞いてくれてありがとう
エマ:些細なことにございます
ユーリ:僕は…とてもひどいことをした…許されるなどとは思っていない。けれどせめて、彼女に会って謝りたい。もし、彼女がもう僕を好きじゃなくても…この気持ちを伝えたい
エマ:恐れながら殿下
ユーリ:だからもういいって。…なんだ
エマ:私、今回の件、割と根に持つと思います。お嬢様が許されたとて、殿下がお嬢様を傷つけたこと…忘れは致しません
ユーリ:…当然だ
エマ:誓ってください。私に、神に、王の紋章に。もう二度と、お嬢様を傷つけないと
ユーリ:……誓おう。僕はもう二度と、マリア・ルーシェを傷つけない
エマ:……行ってください、殿下。お嬢様はまっすぐ突き当りの広間にいらっしゃるでしょう
ユーリ:感謝するっ
エマ:はぁぁ…長期休暇も申請しよう…
0:広間のドアをノックするユーリ。
マリア:どなた?
ユーリ:ぼ、僕だ…ユーリだ
マリア:…どうしてこちらへ?
ユーリ:君に会いに来た
マリア:なぜ?私と殿下はもう、婚約を解消した間柄ですわよ
ユーリ:このドアを開けてもいいだろうか。……中に入れてくれ。君と話がしたい
マリア:なぜ?
ユーリ:君に謝りたいからだ
マリア:なぜ?
ユーリ:君に…酷いことを言ったからだ
マリア:…私、身に覚えがございませんわ
ユーリ:君が…!君があんまり美しいからっ…心がざわついて、会うたびに苦しくて…好きなのに!初めて会った時から…君が大好きだったのに…!拒絶して…傷つけた…
マリア:殿下
ユーリ:すまない…本当にすまない…!僕は…君が離れてしまってからようやく気付いた…君がこんなにも………愛おしいんだ…
ユーリ:……会ってはくれないだろうか。もう一度だけ、僕に会ってはくれないだろうか
マリア:私、傷つきましたの
ユーリ:すまない
マリア:傷つきましたの!!
ユーリ:すまないっ……!
マリア:そうじゃなくて…そうじゃなくて…!
ユーリ:マリア…?
マリア:……っ!さっさとそのドアを開けて、私を抱きしめに来てくださいませっ!
ユーリ:マリア……!
0:勢いよくドアを開けたユーリは、そのまま広間で両手を突き出しているマリアを抱きしめた。
ユーリ:すまないっ…本当にすまないっ!愛してる…愛してる……!
マリア:バカ殿下!あんぽんたん!考えなしのおたんこなすっ!
ユーリ:ごめん…ホントにごめんっ…!
マリア:……もう、婚約解消なんて言いだしませんか?
ユーリ:ああ、そんな馬鹿な事…二度と口にするものか…愛してる…マリア…僕と結婚して
マリア:………もう。…私の答えは13年前から変わっていませんのよ?…お慕いしております、殿下。私を貰っていただけますか
ユーリ:ああ…ああっ……!愛してる…マリア…
0:場面転換
マリア:エマ
エマ:なんでしょう、お嬢様
マリア:これ、修道院に仕掛けておきました盗聴器ですの。後で聞けるよう手配をお願い
エマ:盗聴器って…お嬢様、いつの間にこんなものを
マリア:一週間前よ
エマ:一週間って………準備がよすぎませんか。殿下と婚約解消することも、そのあとすぐ殿下がお嬢様を迎えに行くことも全て…計算ですか
マリア:あらやだ、聞こえが悪いわ。私はただ、起こりうる未来に備えていただけですわ。起こりうる…というよりは起こってほしい未来だったけれど
エマ:それで?この音源で生涯殿下を脅してこき使うご予定ですか?
マリア:まさかっ!ひっそりと聞き直しては胸を熱くさせたいだけよ
エマ:……ある意味、悪魔だと仰った殿下は正しかったのですね
マリア:何か言った?
エマ:いいえ、なにも。ただちょっと、この国の未来の主を不憫に思っただけでございます
マリア:あら、私が世界一幸せにしてあげるから憂う必要はなくてよ?
エマ:……そうですね、要らぬ心配でしょうね。……もう私を巻き込まないでくださいよ
マリア:ふふっ。善処するわ
目指せ!婚約破棄! 3人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207
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