中学二年生のマモルはある日、用水路で不思議な少年に出会う。
彼はなんと河童だという。
外見は10歳くらいに見えるのに、マモルの祖父や母のこともよく知っているようだ。
彼と接するうち、マモルは忘れていた祖父のことを思い出し、失いかけていた自信を取り戻していく。
思春期の少年が、家族に愛されていることを思い出し、大人へと羽ばたいていく物語です。
どことなく昭和感漂う夏の景色に癒されます。
また河童くんがとってもかわいいです!!
マモルのクラスメイトや学校の先生、母親や近所の人も優しい人物ばかりで安心して読めます。
私の中二は反抗期真っただ中でやや荒れていたので、みんなに愛されるマモルくんにちょっと嫉妬しながら読みました笑
異性と過ごす楽しい放課後なども経験なかったので「チキショー!」と血涙流しながら読みました。嘘です笑
――というように、読んでいると中学時代に気持ちが戻ってしまいます。
それくらいリアルに思春期のキャラクターたちや、中学校の日常風景が丁寧に描かれています。
喜怒哀楽のすべてが詰まった感動作。
5万字程度と中編なのでサクッと読めますが、内容はとても味わい深く心に響くものです。
感情を揺さぶられてすごくおすすめなので、ぜひ読んでみてください!
ふとした時に「自分も大人になったなぁ…」と思う事、皆さんにもあるかと思います。そしてその時、大人という言葉は大抵、あまり良くない形として用いられている様に思えます。
愛想笑いが上手くなる、肩入れせず人付き合い出来る、割り切って物事を捉えられる、凄惨な事件に動じなくなる…一種の諦観にも似た、擦れてしまった心とくたびれた身体。それを認識した時、人は大人を感じるのかなぁと思っています。
この物語は、そんな私達大人が、かつて持っていた色鮮やかな感情を、くっきりと思い出させてくれます。
主人公の守流は中学生。人よりちょっと内向的で、何にも自信がなく、特に夢もない…そんなどこにでもいそうな彼が、河童の喜八と出会った事で様々な気付きや価値観を得ていくお話です。お母さん、妹、友達、そしてお爺ちゃん…決して広くないのが子供の世界ですが、守流の世界にいる彼らも、皆生き生きと、そしてたおやかに物語を彩ります。
物語は基本的にはジュブナイル。小さい頃には持っていた感情や、子供ならではの目線といった、大人が忘れて久しいそれらが、守流の目線を通して非常に丁寧に、そして瑞々しい感性で描かれていきます。それでいて文体には無駄がなく、読み易いのが作者様得意の手法。一話をあっという間に読めてしまって、つい続きが気になってしまいます。
また、全面に打ち出されているわけではないのに、どこか常に懐かしさと物悲しさが感じられるのも、この物語の魅力のひとつです。数話お読みいただければ、必ず納得して貰えるはずです。特に涙腺の弱い方、後半はご注意ください。
大人をやる事にちょっと疲れてきている方、この物語で昔を思い返して、心に暖を取ってみてはいかがでしょうか。