病人なのでボッチにしてください

私は強烈にボッチになりたい

　一人で暮らしたい。

　いつもそう言っている。

　パートナーの前でも友人の前でも兄弟とのLINEでも、私は一人で暮らしたいと言っている。やたら悲しい顔をされたり、いやだと駄々をこねられたりするけど、別に意地を張ってるとか愛が分からないとかお前が嫌いになったとか、そういうことじゃない。

　私は薬に頼って生きている。

　双極症が原因の酷い不眠、関節リウマチによる倦怠感と激痛。

　そういうのを完全にコントロールするには、大量の薬を効果的に効かせる生活と、それをサポートしてくれる近しい人が必要なのだが、それがかなわなくて会社員として困っているから一人で暮らしたいのだ。

　ずっと健康だった人は、病人が全く理解できない。

　これはうちの親も同じである。私の不調を『薬のせい』だといい、高額な治療費は『医者が詐欺師だから』と決めつける。三割負担で７万円必要だと話したときは、何を狂ったのかその金を寄こせと言い出した。娘なら親に貢ぐのが当然だとか、にやにや笑っていた。

　多分、信じていなかったんだろう。実は私が男に貢いでいて、恥ずかしいからごまかしているとでも思い込んだのだろう。――私は即逃げた。冗談じゃなく、本当にネカフェに寝泊まりして、そのまま今の県に脱出した。

　自覚のない病人も、また病人を理解できない。

　私は自分の病気を理解していた。だからかなり節制して、メンタルが傷つかないよう社会でうまくやっていた。

　だけど、うちのパートナーも双極症になり、彼の方は自覚がゼロだった。理性のブレーキが壊れて金を使いまくり、出かけまくり、夜遅くまで私を振り回した。性的にも常識を逸脱した。医者には彼を入院させてと頼んだが、コロナと重なり拒否された。

　今はまだましだけど、それでも節度が壊れている。私が寝ると伝えた時間を超えて、遅くまで勢いで家事を手伝わせたりする。彼の世界から、自分以外と常識がたびたびログアウトする。

　彼ほどじゃなくても、自称病気の友人は距離感が狂っている。

　きっと何気なくやっている行為が、病的で怖いのだ。

　急に激しく泣いて見せたり、親切な言葉を連打したり、こっちが分かれろと言った相手にデモデモダッテとしがみついたり、四六時中Twitterを監視していたり。

　それが全部、相手への甘えだと分かっていないのだろうか。相手の生活を脅かしていると分かっていないのだろうか。相手が構ってくれるからって、相手が暇とは限らない。男女問わず構ってちゃんはとっとと自立して大人になれ。駄々っ子のまま大人になった存在は、間違いなく生きる障害物じゃ。

　今の日本のシステムは、病欠を想定していない。

　調子を崩しやすい私は、そのせいで今まで何度も心を折られてきた。戻ってきたときに居場所がないなんてしょっちゅうだった。陰口もさんざん言われた。

　だから必死になって体調をコントロールした。目標は「通院以外で絶対に休まない」。だけどたった１日他人に振り回されるだけで、万力で締め付けられるような頭痛やら、固まって激痛になる手首やらで苦しむ。ひと月も続くと、杖をつかなきゃ歩けないほど膝まで固まる事もある。（うちには杖が常備してある）

　生活リズムを一人で整えられるなら、こういうことは起こらない。自分でしっかりやっているという自負も生まれ、メンタルも大きく傷つかない。

　他人に振り回されることが、私を傷つける一番大きな要素になる。過去に一度成功した経験があるからこそ、ますます一人の暮らしが恋しくなる。

　うちの彼にもトモダチとやらにも、仕事に関する夢がない。

　だけど私には、ＳＥとして足りない知識を吸収し、いつか育てる側に回りたいという夢がある。作家になる夢と同じくらい強い夢だ。

　だから最低限、私の生活リズムを脅かさないでほしい、ストレスを持ち掛けないでほしい、私の心を折らないでほしいと、いつも思っている。伝えている。

　しかし大半の人は耳を貸さない。『オトモダチ』『コイビト』『カゾク』を自称する人間の方が平気で私の時間を削り私にすがる。ありがとう、ごめんねの言葉が薄っぺらくて殴りたい。

　ごめんねというなら実践しろ。

　甘える前に自立しろ。

　相手の言葉を信じるために知識をつけろ。

　寝込む私を怠け者と見下すなら、お前のやった罪を数えろ。

　避けられてこっちを責めてくる奴は論外じゃ、相手にお前の面倒を見る余裕がないのが分からんのか！

　人は群れなきゃダメな生き物じゃねえ、猿山のサルは自然界にゃいねえ！！

　一向に良くならない頭痛に悶絶しながら、周囲への怒りを一人ぶちまける。

　分からない奴は分からない、奴らの脳に相手を思いやるスペースはない。

　一人で職場の冷たい目線に耐えて、奥歯すり減るまで歯ぎしりして、親切とかいう自己満足の障害物を真正面から食らってやって、命削って生き延びる。

　最近の私は、そんな日々です。

　……だからTwitterのコメント欄も閉じてんだよ。