【4-35】 疑念は確信へ
【第4章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818023213408306965
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当初、取るに足らない誤報として打ち捨てられた「アリアク城塞の謀反」だった。
しかし、第2報・第3報が入るに従い、それが無視できない事案であることが判明していった。
王都・ダーナから発せられた、帝国領への次期――秋季出兵計画について、期日を過ぎてもドネガル家から兵役に関する回答書が提出されていない。そのことが、疑念を深める一因となった。
帝国暦386年4月24日、帰都したばかりの国主レオンは、来た道を戻るように、アリアク城主・ネイト=ドネガルのもとへ詰問の使者を派遣した。
【地図】ヴァナヘイム ブレギア国境 航跡 第2部 第4章
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16818023214098219345
しかし、城塞にたどり着く前に、その支城たる東城にて使者は足止めされたのであった。
その後、王都から使いが再度派遣されたものの、2度目のそれは驚いたことに、東城の城門にすら入れてもらえず、追い返されている。
5月14日、この日は帝国領侵攻作戦を練るべく、首都・ダーナの国政の間に諸将が招集されていた。しかし、ダグダの弟たち――ドネガル兄弟等、アリアク城塞からこの軍議に参加する将軍はいなかった。
そのまま、
レオン=カーヴァルが国主の座に就いてからは、座席の配置は先代の頃に戻っていた。
東面に先代国主正妻の御親類衆、西面に譜代の宿老衆、南面に国主補佐官衆という配置は同じであったが、北面中央に新国主と筆頭補佐官が席をとった。
【席次】ブレギア国 国政の間(レオン国主就任後)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16818093076720576213
「これまで、このブレギア国に尽くしてこられたドネガル御一門が謀反など、何かの間違いとしか考えられません」
珍しく、寡黙な宿将・エヘ=ボルハンが発言の口火を切った。
間違いであってほしい――冒頭の
「間違いですと?使者が2度にわたって追い返されている事実を、将軍はそのようにご判断なさるのですか」
新国主の補佐官・マセイ=ユーハは、すぐにボルハンの願望へ反発した。
「新城主・ネイト=ドネガルではなく、前城主の弟君、クイル公・ケフト公・グレネイ公へ直接声がけしては」
「彼らにも再三電報を送っていますが、返電はありません」
続く宿将筆頭・アーマフ=バンブライの提案について、そのようなことはとうに行っているとばかりに、補佐官・ダン=ハーヴァが回答する。
「……その、ネイト殿ですが、帝国の将校が複数名、近辺に入り込んでいるとの報告もありますが」
「……」
「……」
「……」
筆頭補佐官・ドーク=トゥレムの物言いはいつも以上に冷厳であった。広間に集った者たちは皆、口を閉じてしまう。
「もはや、議論の余地はない。ただちにアリアク城塞を攻め落とすべきかと」
次席補佐官・ムネイ=ブリアン以下、レオン派の若い補佐官たちは、積極策に声を揃えていく。
「アリアク城塞を正面から攻めるなど、どれだけの被害が出るか、分かったものではない」
「過去、帝国軍やヴァナヘイム軍があの城を5度囲みながら、5度とも撤退を余儀なくされておる」
クェルグ=ブイク、ベリック=ナトフランタル等、先代から仕える武断派将軍たちは、口々に城塞攻撃に反対した。
彼らは、宰相・ラヴァーダが手塩にかけて改築した城塞の堅固さを知り抜いている。
【4-29】 アリアクでの蠢動
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330662346742674
一見、アリアク城本城だけなら、中規模城塞に過ぎない。しかし、この城は、周辺に8つの支城を抱えた一大要塞なのである。
本城を中心に支城が有機的に機能した時、その守りは文字どおり鉄壁となる。大軍に囲まれること数度、すべて撃退しているという事実がそれを証明していた。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
アリアク城塞を正面から攻めてはダメだと思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
ブレギアの将軍たちが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「対話の使者」お楽しみに。
散会した国政の間に、若き国主とその筆頭補佐官だけが残っていた。
「……宰相様の造り上げた城は完璧か」
レオン=カーヴァルは鼻で笑った。
「帝国正規軍と正面から相まみえる機会がいよいよ来そうですな」
ドーク=トゥレムは予見する――ザブリクの如き
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