【3-16】 筆頭補佐官の献策 上
【第3章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818023211874721575
【地図】ヴァナヘイム国 (第1部16章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330656021434407
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「降伏を受け入れてはならないだと」
「御意」
3月も中旬だというのに、この日も気温はマイナス10度近くまで下がっている。天幕内には簡易ストーブが焚かれるも、主従は帝国式コートの襟を立てたままであった。
理解できない。否、理解したくないという表情を浮かべ、二の句を継ごうとした主人を先に制したのは、またしても筆頭補佐官である。
「ウルズ城塞が
【3-9】 水道橋
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今回、降伏を申し出てきたとはいえ、それは一時的なものに過ぎない。
我らが引き揚げたら、再び彼らは掲げる旗をブレギア
これを機に徹底的に叩かねば、同じことを繰り返してしまう。
だからこそ、これまでに無いほど残虐に、ウルズ城塞をすり潰すべきだと筆頭補佐官は語気を強める。
「我が軍の力を見せつけるのならば、水道橋を破却したことだけでは事足らんのか」
ビフレスト水道橋を
トゥレムの口から大儀そうに白い息が漏れる。
「我が軍は、長期間遠征を続けております」
しかもその間、大小多くの戦闘を重ねてきた。結果、従軍した領主たちに多数の将兵の犠牲を強い、多額の戦費を負担させている。
特に、このウルズでも、帝国老将・ズフタフ=アトロン指南の防御陣に、想定外の人的被害・物的損害を強いられた。
それらを賄うため、ひいては士気高揚のためにも略奪は有効だろう。
「略奪……」
その2文字に怯むレオンに、トゥレムの軍靴が一歩踏み込む。
「もう3月も半ばです」
いまから帰国の途についたとしても、兵士たちは、郷土での畜産業や農業の対応に大きく出遅れることになる。国許へ手土産の1つも必要でしょう。
それには、現地調達が都合よい。
ブレギア軍の武威を示すことと、戦費の補充、略奪は一石二鳥なのだ。
降伏を認めず、生殺しにせよ――ドーク=トゥレムの献策は続く。
「もう数回、城塞から帝国軍に援軍を求めさせましょう」
城塞側から和議の申し出があった――落城が確実になった――いま、主導権は我等ブレギア軍が握っている。
ウルズをはじめ、昨年末よりブレギア軍の攻撃にさらされた多くの城塞は、旧都・ノーアトゥーンへ次々と救援を乞うたはずだ。
だが、帝国軍は応じなかった――応じられなかった。ヴァーガル河で手痛い敗北を喫し、援軍を再編する余裕がないのだろう。
そうした事情を明るみにさせる――新聞記者どもに「帝国がウルズ城塞を見捨てた」と報道させるのだ。
「『帝国頼みにならず』という事実を、ウルズ周辺の諸都市に知らしめることこそ肝要なのです」
トゥレムの三白眼はいつにもまして鋭かった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
トゥレムの献策は、少々度が過ぎていると思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「筆頭補佐官の献策 下」お楽しみに。
「女、子どももたくさんいるのだぞ」
反対に、レオン=カーヴァルの水色の瞳は、弱々しい光をたたえていた。
「ここで示しをつけねば、この先我が軍において、もっと多くの者が命を落とします」
「だめた、だめだぞ、トゥレムッ」
金色の髪を振って喰らいつこうとする若き主人など、筆頭補佐官は意に介さない。
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