UMA(未確認動物)
第3話 大学生時代、大学図書館
大学生時代、著者の学部は忙しく、当時は最後のバスが無くなる夜の十時辺りまで大学の図書館で文献を読み漁っていた。
大学図書館はかなりの大きさで、縦四メートルはあろうかという大きな本棚が壁から壁まで八台は並んでおり、本が所狭しと並べられていた。
それだけの大きさだと貸出中で抜けた本の隙間から覗く事でしか隣の様子を知る事は出来ず、本棚と本棚の間はひとつの廊下のようになっていた。
その日、著者は腎臓について書かれた論文を探し、引用のために題名や著者名をメモし、腎臓のスケッチを描いてレポートを仕上げていた。
それと遭遇したのは、奥から三番目の棚と二番目の棚の間。
論文を探す著者がその間を何気なく横目に見て、通り過ぎようとしたその瞬間、人型をした黒い影と目が合った。
人型をした黒い影は全身もやもやとした影であり、実際には目が付いている訳では無い。
しかし、はっきりと目が合った気がした。
影は本棚の方に体を向けており、輪郭がぼやけて揺れていた。
こちらには見えない本を読んでいたのか動こうとせず、思わず立ち止まってしまった著者など気にしていない様子だった。
著者はこの影が『シャドーピープル』と呼ばれるUMA(未確認動物)である事を知っており、それを実際に目の当たりにしたことで、えもいわれぬ興奮と恐怖を感じていた。
すごいものを見たぞ、と自慢したい気持ちと、こっちに来たらどうしようかという恐怖心。
その二つを持っていたが最終的には恐怖心が勝ち、なるべく刺激しないようゆっくりと、図書館内の共用スペースへ逃げてしまった。
この事は大学の友達には一言も告げず、家族に話した程度だ。
著者の通う大学は都市部からバスで三十分の山のほうにあり、自殺サークルの話や鏡の無いトイレの話があるくらいには怖い話のメッカだった。
そういう場所でむやみに噂にする事はまずいと知っていたし、入学早々変な奴のレッテルを張られたくなくて黙っていたのだ。
この時も、以前UFOを見た時や女の腕を見た時のように周囲が異様な静寂に包まれ、時間の経過が遅くなるような感覚に襲われた。
この感覚は奇怪な出来事と直面した時に毎回起こっているが、これが何を意味しているのかはわからない。
著者には霊感が無く、心霊スポットに近づいたりもしない。
この感覚がどういったものなのかわかるのはこれから先なのかもしれないが、少なくとも、この感覚がした時は周囲に気を付けたいと思う。
実体験怪奇録 Sierra @SierraSSS
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