最終話 別れの日
数日後、俺は母さんと一緒に新幹線に乗っていた。
「お父さんとソラのこと、さびしい?」
母さんの言葉で、ソラの笑顔が浮かんできた。
「……そんなことない」
嘘をついてしまう。
「大丈夫、また会いに行こうね」
ソラの大きな瞳が、脳裏にちらつく。
「……」
俺は父さんとソラのことを、誰にも伝えていない。
夢かなにかだと思いたかったのかもしれない。
「ねえ母さん」
「なあに?」
「父さんのこと、好き?」
「ええ、大好きよ。もちろん、アツシもね」
心がぎゅっと締め付けられる。
「……」
「……実は母さんね、父さんと離婚しようか考えたことあるの」
「……え」
母さんは遠くを見るように言った。
「結婚してみると、なんだか気弱で、子育てでもなんだが役立たずで……アツシが居なかったらとっくに別れてたわよ。
けどなんだかんだ、今こうして母さんが仕事でうまくいって、幸せなのも、父さんが居たからなのよね」
母さんの愛情が胸に重くのしかかる。
「……うん」
俺は、この悪夢のような本当のことを胸に秘めながら、前に進むことを誓った。
***
俺は遠くの街で新しい生活を始めた。
最初は慣れない環境で苦労したが、次第に友達ができ、新しい日常を楽しむようになっていった。
母さんと俺は、夏休みや冬休みの時に、父さんの家に帰った。
どうやら父さんとソラは上手くいっている様子だ。
ソラは点数を上げて、目的の中学校に主席で受かりそう、とのことだ。
そしてソラとは友達として、一緒に遊びに行ったりもした。
「これはね、パパさんと一緒に温泉旅行に行ったときの写真よ」
半裸のソラと、半裸の父さんが映っている写真を見てドキドキする。
「誰にも内緒だから、ね?」
「ああ、言わないよ」
「うれしいなぁ、あっくんとまたこうして仲良く出来るなんて思わなかった!」
「うえええ、リア充きも」
「あー! 意地悪! ふふふ」
俺もおもわずにやけてしまうのだった。
ソラの瞳は、キラキラ輝いて見えた。
————
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