武装戦隊全部俺

めいき~

第1話 武装戦隊全部俺

「クソ・・・」


左肩を押さえながら、剣士が膝をついた。




森に採取に来て、こんなやべぇ奴に当たるなんて。



ピンクの腰蓑に、パーマが入った筋肉質のオーガ。



「この森に、オバタリアンオーガが居たなんて」





オバタリアンオーガが剣士の脳天に、棍棒を振り下ろして止めを刺しそうになった。




そこに、走りこんでくる紅いド派手なパッツパツのタイツを着た男。



股間のバッジには剣と書かれていて、オーガの一撃を剣の腹で受け止める。



「早くいけっ!」



そのあまりの恰好にフリーズするも、助かると言って剣士が転がるように下がっていった。



「はぁぁぁぁぁぁ!!」



下がってポーションを飲みながら、剣士は思った。



(恰好以外は尊敬に値する、素晴らしい剣技だ)




オーガの棍棒を剣の腹でさばく事で、刃を使わずにそらしていく。




だがっ、一体一じゃ不利だ。



そこで、紅いスパッツの男が左腕のブレスレットに助けを求める。




「へい、カマン!」



木々の間から四人の人影が飛び出すも、ポーションを飲んでいた男が思わず咽て噴き出した。



同じようにスパッツをはいた、同じ顔の違う色のスパッツをはいた奴らが飛び出して来たのだ。



蒼いスパッツの男が、弓を両手にポーズを決める。

黒いスパッツの男が、鉄球を両手にポーズを決める。

黄色いスパッツの男が、尻を突き出したポーズを決める。

ピンクのスパッツの男が、腰をくねらせたポーズを決める。



その中央に、まるでRPGのパッケージの様な剣を掲げるポーズで紅の男が中央でポーズを決めた。



「紅い股間のソードマンっ!」

爆発音と共に、火柱が天まで昇る。


「蒼い、閃光の魔弓士めぇぇぇん」

爆発音と共に、蒼い魔力が天まで昇る。


「黒い、撲殺鉄球のマッチョメン!」

シュッシュと鉄球を持ったままとは思えない軽快なフットワークで足を鳴らして一歩踏み込んで黒い土砂を巻き上げた。


「黄色い、おちゃめなヒップメン!」


尻からすかしっぺを出しながら、空中で胡坐をかいて浮いたまま止まっていた。


「ピンクの、変態おねぇめぇん!」


色んな所をくねらせて、口紅のおっさんがポーズをとった。



全員が、並んで対象のポーズをとりながら。オーガの攻撃を、かわすという実に器用な事をやっていた。



「「「「「武装戦隊、全部俺っ!」」」」」



いや、全部お前一人かよと思いながらも助けてもらってそれを突っ込むのはどうかと思いつつ改めてポーションを飲んで折れた骨を何とかすべく手ごろな木を拾っては、口で自分の着ていた服の袖を引きちぎって強く固定した。




黒いスパッツの男が叫び、服の上半身だけがはじけ飛ぶ。



「パンプアップ!!」



瞬間に、全ての筋肉が盛り上がり身体強化が発動しオーガの棍棒を鉄球を持ったままの右ストレートで迎えうって弾き飛ばした。




つぇぇぇ!!思わず、助けられた剣士が叫ぶ。




そのまま、素早く蒼い魔弓の魔力の矢がバランスを崩したオーガの肩を正確に射抜く。


しかし、ダメージはあっても直ぐにオーガが体を起こして蹴りを放ってくる。




「散開!」



紅いスパッツの掛け声と共に、ゴキブリの様な動きで全員がカサカサと逃げていく。



だせぇぇぇ!!思わず、助けられた剣士が叫ぶ。




もう一度、蒼い魔弓の魔力の矢が三本まとめて飛んできた。

それを、オーガはバックブローで殴り落そうとした。




「そうはさせんよ!」



黄色のスパッツが、尻を突き出し魔力の矢を屁で曲げた。


それによって、軌道が変わり拳には当たらずそのままオーガの眼に魔力の矢が突き刺さる。



うめぇぇぇ!!思わず、助けられた剣士が拳を握りしめた。




眼を潰された、オーガがそこらじゅう手当たり次第に暴れまわり辺りがクレーターだらけになっていく。




「再び、散開!」


紅いスパッツの男の掛け声で、まるでいたずら小僧がカミナリ親父から逃げる様な動きで散っていく。




どごんどごんと、クレーターが増えていく中で遠い眼をしながら五人が円陣を組んで。


「ねぇ…、どうしよ。あれの中に飛び込むの怖くね?」

「やばいよねー、怒らせちゃったけどこのままばっくれようか…。」


ひそひそとそんな相談が、剣士の耳に入って思わず突っ込みをいれた。




「ちゃんと倒せよ、無責任すぎるだろ」




そんな、声を聴いて五人の男(一人)が分身のまま全員がブリキの油が切れたような音を立てながら首をぎぎぎと剣士の方を向いて再び円陣を組んで相談した。





「いやぁねぇ、ちゃんと倒すわよぉ。」



ピンクのスパッツの口紅をつけて、マスカラを濃くした男がなよっとした声で言った。




今、ばっくれようって聞こえたんですがぁ?!



助けられた剣士は、まだ傷が痛むのにも関わらず突っ込まずには居られない。





「皆、合体技でトドメよぉ!」


ピンクスパッツの男が指で銃を撃つポーズを作って、片目でウィンクした。



「「「「よろしくってよ!!」」」」



蒼い弓の男が、ピンクのスパッツの男の背中に手を当てて魔力をありったけ注ぎ込む。


紅いソードマンの剣を、口にくわえ。黒い鉄球を、両手に装備した。



その間に、後ろで、腹が風船のように膨れるまで息を吸い込み続ける黄色いスパッツ。



「いくぞゴラァっ!」



ピンクのスパッツの声が、一気にシリアスと化して悪鬼羅刹の表情となって突っ込んでいく。



黄色のスパッツの屁で、超加速したピンクのスパッツが突っ込んでいく。




オーガが悪あがきに、身体強化してステータスが倍化したのが見えたので蒼いスパッツが叫ぶ。



「ピンクっ!!そいつ身体強化使ってステータスが倍になったぞ!」




それを聞いて、一瞬だけ蒼いスパッツの方を向いて左手の親指を立てて合図した。




両手に装備した鉄球の左手でオーガの棍棒をぶん殴ると、それだけでオーガの棍棒が木っ端みじんに砕け飛び。そのまま、それを握っていた右手の拳まで指が複雑骨折したのがみえオーガの顔が苦渋に滲んだ。



そのまま、オーガは歯を食いしばって左手を振り下ろしてくる。



それを、両手をだらんと下げて脱力してまるで布の様な動きで躱し。

口にくわえていた、紅いタイツの剣をオーガの足の甲に突き刺し。


拳の鉄球で剣の柄を叩いて、固定した。



「黄色!」


その間に、空中にピンクが飛び上がり親指と人差し指でハートを作った。



「承知!」


さらに、それより高く黄色のスパッツが足で飛び上がりヒップをピンクに向けた。



「あなたのはーと(魔石)を、いただいちゃうゾ。」



助けられた剣士の、それはやる必要あんのかよという突っ込みは森に消えた。




屁の力によって、推進力を得たピンクがオーガの心臓めがけて突っ込んでくる。



「素材になれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



鉄球つきの拳で頭、体、股間、足の順に鉄球で叩きまくりながら、まっすぐ地面に着地。



最期に、オーガの足を地面に固定していたレッドの剣をネリチャギの足の動きで真上に引っこ抜く。


真上に飛んでった、剣が股間→心臓→頭蓋の順に貫いて天へ舞い上がる。



そのまま、どさりとオーガが地面に大の字で倒れた。


そして、全員が紅いスパッツの男に吸い込まれて。紅いスパッツの男が右手を掲げた瞬間に剣がその手にスポっと落ちてきた。


武器も一緒に魔法陣が紅いスパッツの真横に二つ現れて、吸い込まれて収納される。




「討伐完了!」




剣士がよろよろと立ちががると、助かったよと笑った。



「助かって良かったな、俺の名はオカズノリ まゆげ。人は俺を変態(しんし)と呼ぶ!」


(いや、それは呼ばれてもしょうがねぇよ)


と剣士は思ったが、引きつった笑いのまま。




「さて、それでは。俺は街の広場で、冒険者の役を大道芸でやる時間だからな。良かったら見に来てくれ!」



(冒険者じゃねぇのかよ!)





こうして・・・、今日も変態芸人オカズノリは街で大道芸を披露してはおひねりを貰って生活していた。



たまに本物の冒険者を、助ける事もある。



皆も、怪しいスパッツを見かけたら「キャー変態よ」と叫んでみよう。


きっと、衛兵さん達が大挙して押し寄せるだろう。



負けるな、まゆげ。

逃げ延びろ、まゆげ。



君には、いつも犯罪の容疑がかかっているっ!





=終わり=

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