第19話 後日談

***19***


 あぁーあ、イヤになっちゃったなあ。

「男ってどうして、守れもしないものを終生守ると誓ったりするんだろうね」

 ラパンの運転席で私ぶつくさ、言わずにいられなかった。

「そりゃ言ってる時点では、未来のことはどうなるかわからないから」

 いい加減ていうのよ、そういうのは。

「今はいいよ今は。イアラちゃんも少女だし、無料でボディーガードしてくれるんなら最高じゃないさ。けどねえ」

 あの少年がどれだけあてになるというのか。

「ホワミーがなんて言いたいか、わかる気がする。女の方が結局は現実を見てるものよね」

 と由美。助手席であんまりのびやかに過ごされると、すっごく運転がしづらいんだけど。

「んで、リアラさんがどうしてあんたんちへ乗り込んできたの?」

「おどしたから?」

 ひえっ。

「なんて言って?」

「刑法にひっかからないように」

 あなたの秘密を知っている、とかかな。イヤだよねぇ。由美、ほんとに人のイヤがるツボ知ってるわぁ。いや、それも気になってはいたんだけれども。もう一つあったや。

「イアラちゃんだと思うんだけど、飛び降りる前にお水みたいなのこぼしたんだ。あれ、なんだったのかなあ」

 おおかた、落下地点を確かめたかったんだろう、と由美。なんだ、イアラちゃんも飛び降りるときは気をつけたんだね。死ぬ気じゃなかったのかも。

「イアラちゃんもせいぜいナイトくんを働かせて、楽をさせてもらえばいいのよ。ね、ホワミー」

 しっかし、頭にくるヤツだった、そのナイトくんって。

「女の方が早く大人になるのは、ある意味仕方がないのかもね。世の中、男が優位だって決められてるから」

 そこのところはそう、私も由美に同意見だ。

「うんうん」

 だけど由美はすぐ発想がジャンプするんだよなあ。

「だから私、結婚しなかったんだぁ」

 ほらまた飛躍して。

「まあ、無理に男性の決めたルールに従わなくてもいいんじゃない? しょせんパートナーシップも男性社会が決めたと思うと台無しだよねー」

「あれ? パートナーシップを組もうっていうのは私の一世一代のプロポーズだったのだけど?」

「私は無料で介護のボランティアはごめんだからね」

 と、ハッキリ言ってやった。

「介護はパートナーシップの先にある話でしょ。そんな風に思ってたの? ホワミー、ひどいわ、それは」

 由美は反駁してくる。んとにもぅ。

「好きな男とこの先どうするかに頭を悩ませてるのに、どうして女に言い寄られねばならないの」

「ホワミーはあっちにもこっちにもいい顔するんだもん。その気になっちゃう」

 とりあえず由美は*ね、と私はカーブでハンドルを大きく切った。

 ほんとに*ね、と。


  了

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