雑貨たちの物語

雑貨たちの物語

炎天（えんてん）の浜に溺れる砂時計

春暁（しゅんぎょう）に廻（めぐ）る命と風見鶏（かざみどり）

渾天儀（こんてんぎ）星を廻せど催涙雨（さいるいう）

冬銀河（ふゆぎんが）汽車の模型で飛び出して

アナグマのスノードームに迷いけり

虫の音に耳そばだてる招き猫

信楽（しがらき）のたぬきと遊ぶ寒雀（かんすずめ）

ベランダにティーカップの蝶舞い降りて

夏休みひとりぼっちの植木鉢

父の日を思い起こせし腕時計

思い出が溢れ欠けたる花瓶かな

主亡き金魚鉢より覗く空

鵙（もず）の贄（にえ）眇（すがめ）て見れば指人形

除夜の鐘ガラスの靴は消さないで

古本に忘れ去られたクローバー

春風に紙鉄砲で立ち向かう

六月の雨に踊るは赤い靴

雪催（ゆきもよ）いランプの光瞼（まぶた）撫（な）で

封蝋（ふうろう）の香りに添えるカラスウリ

スコップとどこかへ逃げたいシクラメン