金色の終末 ―週末のデスゲーム―

ぶらぼー

開幕

「ゴールデンウィークが始まったでヤンス!」


 ヤンスデス・チェンテナリオ100世は海パンに浮き輪と麦わら帽子という格好でバルバロイ・スズキの前に現れた。


「知ってるでヤンスか? 今デスゲーム小説コンテストなるものが開催されているようでヤンスよ」


 ヤンスデスの言うデスゲーム小説コンテストというイベント――賞金が出たり書籍化を狙えたりする中々イカしたイベントである。




「いや……俺は遠慮するよ」


 バルバロイは味噌汁にご飯を放り込んで猫まんまにしてきこむ。


「なんででヤンス!? せっかくのゴールデンウィークでヤンスよ!」


「難しそうだもん。デスゲームってアレでしょ。映画でいうとバ〇ルロ〇イアルとかC〇BEみたいな奴でしょ? 閉じ込められた男女がもう派手に死んでいっちゃったりする奴……」


 バルバロイは唐揚からあげにレモンをかけながら続ける。


「俺、あのジャンルで斬新で凝った設定思いつかないもん。それよか今書いてる連載の続き考えないと」


「ツイてる日で2PVくらいしか付かない連載なんて放っておいても大丈夫でヤンスよ」


「〇すぞ」




 ヤンスデスは麦わら帽子の中からアイスキャンディーを取り出して食べ始めた。


「じゃあ詳しい人連れてくるでヤンスよ。彼らの意見を参考に書けば賞金ゲット間違いなしでヤンス」


「いや、俺は……」


「連れてきたでヤンス」


「もうちょっと物理法則は仕事してほしい」




 バルバロイの前に5人の男女が現れた。皆何故かサバイバルナイフを舐めている。


「幾多のデスゲームで生還したデスゲームのプロの皆さんでヤンス!」


「デスゲームの……プロ!」


 バルバロイは正座してお茶を飲みながら5人の顔をよく見てみた。言われてみればデスゲームのプロっぽい顔だ。というかデスゲームのプロ以外の職業に就けそうにない。家を出て三歩歩けば逮捕されそうな危ない目をしている。




「よく見るでヤンス! 今からレーザートラップでこいつらを切り刻んでやるでヤンス」


 ブゥウン!


 ヤンスデスが言うと同時に、部屋の壁から赤いレーザーが何本も出てきた!レーザーは空中を移動して5人の男女に迫る!


「ハイヤー!」


 5人の男女はジャンプしたり関節を外したり地面に潜ったりして華麗にレーザーを避ける!


「す、すごい……!」


 バルバロイはチーズケーキを頬張りながら拍手を送る。


「次は酸の雨を浴びせるでヤンス!」


 バシュゥ!


 今度は天井からスプリンクラーで何か液体が撒かれる。液体を浴びた複乳宇宙人のフィギュア(バルバロイの所有物)がドロドロに溶け出す、酸だ!


「ハイヤー!」


 の男女はなんか、なんかこう、バリアー的なものを張り、酸を防ぐ! アメコミヒーローを思いっきり雑にして薄めたような奴らだ!


「すごいすごい!」


 バルバロイはメンズ化粧水を肌に馴染ませながら歓声を送る。


「でしょ! 彼らにアドバイスを聞けばデスゲーム小説なんて余裕でヤンス!」




「いや、それがさ……すごいのはわかったんだけどさ。ヤンスデス」


「なんでヤンス」


「一人死んでる」




 バルバロイは床の方を指さす。ドロドロに溶けた死体がある。




「……」


「……なあ、ヤンスデス」


「なんでヤンス」


「この展開どうする」


「どうしようでヤンスね」


「ここでイカしたオチをつけられないと俺、カクヨムで覇権取るどころか人権を得られないような気がする」


「――その気持ちこそが美しいでヤンスよ」


「何?」


「私は極限状況で人は何を考えるのか――それを見たくてこのデスゲーム的なトラップをデスゲームのプロに仕掛けたでヤンス。今こうして何かこう……罪悪感?後悔?的なものに追い込まれたバルバロイ兄貴の苦悶の表情が見れたので私は――」


「ゲームマスターっぽさが投げやり」


「……やっぱデスゲームは難しいでヤンスね」


「なんかもう少し個人的に慣れ親しんでるテーマが来たら頑張るよ」


「じゃあゴールデンウィークはS〇eamでゲーム探しましょうでヤンス」


「またなんかいいオープンワールド出てねえかなあ」




 こうしてバルバロイとヤンスデスはこの展開を上手く〆る事が出来ないまま、死体を片付けたり、外に出ずにパソコンにかじりついたりして今年のゴールデンウィークを過ごした。


 おわり

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