良質なホラーは、いつだって人を裏切る

映画評論家であり悪魔主義者である高橋ヨシキさんは、昔ある番組で確かこんなことを言っていた。
「人間にとって本当に怖いのは、不条理です。だから、ホラー映画でその不条理を上手く描いたものは名作なんです」
仰るとおりである。
確かに、古今東西の名作と謳われるホラー映画が主に描くのは「不条理」がもたらすホラーなのだから。
変なビデオを見ただけで、何で一週間後に死ななきゃいけないの? キャンプに来ただけで、なんでホッケーマスクの殺人鬼に殺されなきゃいけないの? 善意で孤児の里親になっただけで、なんで猟奇的な呪いにかからなきゃいけないの?
誰しも一度は思ったこと、ありませんか?

さて、閑話休題。
この作品は、良質なホラーである。
主人公・間宮は、大学で同じ学部だけれども一度も話したこともない三ツ橋という人物から、怪しげなアルバイトを紹介される。
そして、イスルギと名乗る怪異の体験を売り買いする男と出会い、高額な報酬と引き換えに怪異と遭遇していくことになる。
あらすじは、ざっとこんな感じだ。
正直に言おう、これこそ「不条理を上手く描いたホラー」である。
主人公にしてみれば「アルバイトしにきただけなのに」である。
スマホを落とした、変なメールを受け取った、謎のゲームの参加者になった的なものではない。
自身の何らかの過失ではなく、三ツ橋というほぼ赤の他人からもたらされたものから、世にも恐ろしい目に遭っていくのだから。

さて、書くとネタバレしてしまいそうなので、書くのはここまでにしておこうと思う。
最後に、レビューを書いたやつから一言。

良質なホラーは、いつだって人を裏切る

この「人」とは、この物語の主人公・間宮のことか、それとも、この物語を読むあなたのことか?

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怪蒐師

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