第2話 ついに魔王軍に勤務!したっぱの仕事はキツい

目を覚ますと、黒い煉瓦造りの部屋にいた。


「おい、こっちだ私は」


重々しい声が聞こえた。


振り向くと、黒いスーツを着た巨人がいた。


でかっ………。


こうべを垂れて平伏せよ」


巨人はとても低い声で言う。おそらく、さっきの管理人の話の通りだと、この巨人は魔王だろう。


一応上司なので、俺は土下座した。

魔王は言った。


「貴様が新入りか。勇者討伐は厳しいぞ。いけるのか?」


え、疑問形?どう返せば良いんだ?


間違った言葉使いじゃ失礼……いや、魔王だから何されるかわからん!


「え、あ、はい。いけます」


「そうか。では、人間どもの王国の近くの山の要塞の見張り用の塔で、人間や勇者の出入りを見張ってろ。

特に勇者が出入りするときは、要塞内サイレンを鳴らせ。

お前の種族は犬。戦闘力皆無だ。絶対に戦うでない」


魔王に言われてふと気づいたが、てのひらを見てみると、なんと犬の前足だった。


さすがに人間の姿で魔王軍になると思っていたわけではないが、まさかよりによって犬だとは。


もうちょっと良い種族があったと思う。まぁ、犬に失礼だし、発言したら間違いなくやられるからやめよう。





こんな感じで、俺は王国の近くの山の要塞の物見ヤグラに派遣された。


王国を出入りする人間どもを監視したり、時々遠くの山を双眼鏡で確認したりするのが俺の役目だ。


寒い。この要塞は魔王軍が作ったものらしいが、エアコンなどの暖房器具は一切ない。


標高の高いこんな山の要塞の、特に高いヤグラで、ずっと監視とは……。


ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ



冷たい風が吹く。当然服を着ることができない犬の俺を、温めてるのは体毛だけだ。


なんか悲しい。1番したっぱは、これくらいしか仕事がないから、しょうがないのだが……。


「おいサボるんじゃねー!勇者が来たら、そこのチャイムを鳴らせよ!」


上司のモンスターが怒鳴る。その上司は、もこもこの体毛を持った羊のようなモンスターだ。



………俺の立場になって考えてほしい。


だが、上司なんて、所詮部下はサンドバッグだ。言ったって意味ないだろーし。


「はくしょん!!!!!!」


寒い。寒い。寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い!


なぜ王国がこんなデカい山の盆地にあるんだ。


……外敵の侵攻を防ぐためか。


んなもんもはや今の俺には関係ない。


………考えるのをやめよう。思考に体力を使ってしまう。


もし仮に倒れても、同じような役職は他にいるだろうし、ろくに治療とかもしてくれなさそうだ。


ってか、よくある系の異世界なんだから、元いた世界より技術が上とは思えなんし。



………はくしょん!!!!!!

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転生したら魔王軍の1番したっぱでした。無理ゲーです。 まめでんきゅう–ねこ @mamedenkyu-neko

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