女の私が手に入れたスキルは、まさかの女体化だった。
ミリ
第1話
「いやぁぁぁ!!!」
私――一年四季(ひとときしき)の叫び声とダッダッダッと走る音が、辺りに響き渡る。
えー。慌ただしい場面から始まり申し訳ないのですが、只今変な怪物(?)に追いかけられています。
ここまでの経緯を説明すると長くなるんだけ…どっ!?
いつの間にか怪物くんが近くまで来ていて、拳が飛んでくる。
私はそれを殆ど条件反射で避け、体制を整える。
「ちょちょちょ、不意打ちは良くないって学校で習ったでしょ!」
って思ったけど、怪物くんに学校なんて概念ないか。(そういう問題…?)
それでね、ここまでの経緯を説明しますとね。
まず、なんだかよくわからないが、異世界のようなところへ転生?してしまった!急すぎてめちゃくちゃ驚いております。
いやさ?普通転生したらこの世界の神様みたいなやつから説明受けるんじゃないの?説明無しってキツイよ?
そして、行く宛もなくさまよっていたら…怪物くんに出くわしたってわけ。
「んもぉぉ怪物くん体力まで怪物なんだけど」
得体の知れない怪物くんを倒すのは面倒くさいので、体力には自信がある私は、ずっと逃げて怪物くんをくたばらせようと思ったのだが。
くたばる気配すら感じない。これはしぶといぞ。
というか…私が疲れてきた!
(ぐぬぬ、こうなったら倒すしか術はないか…)
私は体を反転させ、構えをとる。
怪物くんは、それに応えるように殴りかかってくる。
流れるように攻撃を避け、私は拳を固める。
「はぁぁぁ!!」
威勢のいい声とともに、怪物くんを殴り飛ばす。
怪物くんは、遠くへ吹っ飛ばされていった。
(あれ…思ったより弱かったな…もしかしてこれ最初から倒しておけばよかったやつ…)
あはは、と苦笑を浮かべる。
その時。
【ピコン】
(ん…?)
ゲームでよく聞くような、甲高い音が鳴った。
【経験値を獲得しました】
【レベルがアップしました】
続くように、機械の女の人の声が響く。
私は聞こえた言葉に首をかしげる。
(経験値…?レベル…?それってもうゲームじゃん)
私はもしかしてと思った。
この世界は、異世界じゃなくて、ゲームの中とでも言うの…?
ますますわけが分からなくなり、私の頭はパンク寸前だ。
その時。
「え何あの怪力」
「誰っ!?」
急に誰か話し掛けられ、過激に反応してしまう。
話しかけてきた人は、見た目からして男性のようだ。綺麗な銀髪に、この世界には似つかわしくないラフな格好をしている。
そして、単刀直入にいえば、イケメンだった。
「君、S級モンスターを一発で殴り飛ばしちゃうなんて何者?レベルだいぶあがったんじゃない?ステータス確認してみなよ」
S級、モンスター、レベル、ステータス。ゲームの中でしか使わないような言葉をスラスラ並べられて、戸惑う。
(あの…一応私この世界のせの字も知らない初心者なんですけど…)
この人は私の気持ちも考えてほしい。自分で言うのも悲しいが、私は馬鹿なので理解力に長けていないのだ。
硬直している私に、
「どうした?」
と声をかけてくる彼。
「いや、私この世界のこと一ミリも知らないんですけど…」
「…もしかして、ついさっきこの世界にやってきた初心者?」
まさにそう!という意味を込めて、首をコクコク縦に振る。
「そっか…この世界は、単純にいえばゲームの世界だね」
ゲームの世界、というのは間違っていなかったようだ。
「そして…まあ必要なことだけ教えておくよ」
そう言って、彼は丁寧に説明してくれた。わかりやすかった。学校の先生なれるんじゃね。
彼から説明されたのは、こんなものだった。
まず、あんな風にモンスターを倒すと経験値を得られ、レベルがアップするというものだった。得られる経験値の量は、モンスターの位によって異なるらしい。
そして、今のレベルや、体の状態などを確認するためのステータスを見るには、左手首に触れると見れるんだそう。それは、自分だけでなく他の人の左手首に触れるとその人のステータスも見れてしまうとのこと。
最後に…一人一個、スキルというものが付与されているらしい。簡単に言ってしまえば能力のようなもの。人それぞれ違うらしく、運で決まるんだそう。ちなみにスキルは経験次第でスキル開花が起き、スキルが増えることもあるらしい。
「君のスキルは何かな?」
イケメンさんが、私の左手首に触る。急に触れられて、思わずドキッとした。
「…………」
イケメンさんが、私のステータスを見るなり、押し黙ってしまう。
え、なに???そんなヤバいスキルだった???
私がステータスを覗き込むと、そこに書かれていたのは。
「自身を女体化させるスキル……………にょ、女体化ぁぁ!?」
私は嫌な予感を身に覚える。
えっ…私、元々女だから…
「このスキル意味なくねぇぇぇ」
私の嘆き声(叫び声)が辺りに響き渡った。
「…それで、私はこれからどうすればいいの?」
ショックだったが、落ち着いた私はイケメンさんに問う。
「どう?君は現実に帰りたい?」
「そりゃあ、帰りたいよ」
「じゃあ、ラスボスを倒しに行かないとね」
「ラスボス???」
私は首をかしげる。
「うん。ラスボスを倒して、ゲームクリアとなったら、現実へ帰れる」
「へぇ…」
「そしてここは50階。ラスボスがいるのは1000階」
「いや鬼畜過ぎない???」
というか、50階の時点であんな怪物がいるなら、上の方は相当グロ映像なんじゃない…?
「……このゲームは難易度が凄く高いんだよ。最高記録は637階と言われている」
そう言う彼の言葉に、引っ掛かりを覚えた。
…誰もラスボスを倒したことはないんだよね。ってことは、誰も現実に帰っていないということなる。
「じゃあ、みんなこの世界にずっと住んでるとでもいうの……?」
すると、イケメンさんが曇った表情をする。
なかなか口を開かない。次の言葉は繋げるのに躊躇するような内容なのだろうか。
「みんな、敵にやられて死んだ、とでも言えばいいかな」
結局、何も言葉を濁さずそのまま伝えてくれた。
それにしても、死んだって…
「そんなに難しいの……?」
この世界に来てしまったならば、生き残る確率は0に等しいのではないだろうか。
「でも、君は凄いよ。みんな大体50階でやられるんだ。その原因が、あのモンスターなんだけど、それを殴り飛ばしてしまったからね」
えっ…そんな凄い奴だったの?
思ったよりも軽く飛ばせたから下っ端かと。
「そういえば、君の名前は何?」
「四季、だよ。イケメ…ゲフン、貴方は?」
イケメンさんと言いかけたのは秘密にしておいて欲しい。
「俺は、早凪蓮だよ」
そう言って、にっこり微笑んだ彼…いや、蓮さんの顔は眩しかった。
「じゃあ、早速進めようか」
私は承諾の返事を返して、歩き始める。
すると、早速モンスターが出てきた。
私は戦闘態勢に入る。
「そういえば思ったんだけど、武器とかってないの?」
私が一番得意なのは丸腰だが、敵を早く薙ぎ倒していくなら、武器があったほうが確実だ。
「え?最初目が覚めたときに持ってるはずだけど…」
蓮さんは、首をかしげる。
「え?そんなのなかった………」
スキルも実質無しで、武器もないだと…………?
「嘘でしょぉぉ」
私だけ不利すぎるって。冗談やめてよぉぉ!
私はガックリと肩を落とした。
隣で蓮さんが苦笑いを浮かべる。
「クソぉぉぉ」
私は怒りのあまりモンスターをどんどん殴り飛ばしていくのだった。
女の私が手に入れたスキルは、まさかの女体化だった。 ミリ @0398-sky
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