第90話 残念勇者はじゅんとさせる

 新スキル発現から、一通りの説明を聞き終えるまでは体感だと数十秒かかる。

 だが実際には一秒以下だ。

 スキル取得時はこれまでもそうだった。


 新しいスキルは試せって事で、前の女三人に試してみる。

 まずは60点から、【相性判別】発動!


 【貴方との相性は74%です。恋人になれば、それなりに幸福でしょう】


 ふむ、この説明だと74%は結構高いって事か。


 55点は?

 【貴方との相性は78%です。恋人になれば、それなりに幸福でしょう】


 では本命の75点!

 【貴方との相性は76%です。恋人になれば、それなりに幸福でしょう】


 全部僅差やん。

 まあ、人との相性なんてそんなもん……なのか?


 俺がスキルを試していると、75点、相性76%の女が言った。


「で、どうすんだい? アタシたちを殺すのかい? アンタなら簡単だろ?」


 物騒だな。

 敵対する女を排除……それだとこの世界、キリがなさそうだしなぁ。

 さっきの様子だと、基本女は男を見れば、拉致ってどっか連れて行くんだろ?

 それを止めさせる為には……まあ、このゾンビ化の原因を調査し、突き止める事なんだろうな。

 ゾンビ化を止める→キャー素敵抱いて!

 これが目指すべき、このゲームでの目的って事だろう。

 ならば、どんな女も後々のハーレムの為に残しておくべきだ。


「いや、そんな事はしない」


「そうかい」


 女はやや訝しみながらも、少しだけ安心を覗かせた。


「その代わり、俺をお前たちのボスの所に案内しろ」


 こういうのは大抵、ボスがなんかやっているというのが相場だろう。

 ならさっさとボスの所に行って、謎を解けばいい。


「無理だね」 


 俺の言葉に、女は首を振った。


「ボスは売らない、って事か?」


「いや、そうじゃない。単純な話さ、私たちはもうアジトに戻れない」


「戻れない?」


「途中のゲートを通るのに、早苗姐さんの網膜認証が必要なんだよ」


「……じゃあ、なんで撃っちゃったんだよ」


「愚問だね」


 女はフッと笑いながら続けた。


「あん時、そこまで考えてなかったのさ! あーっ! どうしよう!」


 女は頭を抱えながらうずくまった。

 本物のバカかな?


 うーん、早苗ちゃん相手にエリクサーは使いたく無いが……仮に【幻視の指輪】で早苗ちゃんに変身したとして、網膜認証まで可能か? と言われたらわからない。

 まあ、ここはコイツらからの信用を得るコストと割り切るか。


 俺が【アイテムボックス】を開くと、女が目を丸くした。


「そ、それはボスと同じ……アンタ何者だい?」


「さあな」


 適当に返し、エリクサーを取り出して早苗ちゃんに振りかける。

 彼女の傷がみるみる塞がり、やがて目を開いた。

 ――と、同時に。


『ぴこん! 相性が自動判別されました! 剛力早苗さんと貴方の相性は92%! 恋人になればきっと幸福になれるでしょう!』


 ええ……このスキル大丈夫?

 早苗ちゃんと俺の相性が92%?


「あ、アタイは一体……」


 俺の心境を知らずして、早苗ちゃんは困惑したように身体を起こした。

 その前に、75点が土下座する勢いで座り込む。


「すみません、姐さん! アタイ先走っちゃって!」


 そのまま、女は状況を説明する。

 早苗ちゃんは黙って聞いていた。

 俺は相性に納得いかず、黙っていたが……ふとした事を思いつく。


 さっき【個人情報開示】を早苗ちゃんにかけた時、じっくり確認する暇は無かった。

 あの時確認したのは、名前とスキル構成だけだ。

 今ならもっとしっかり確認できるな。


 二人が話しに夢中になっている間に、こっそりと早苗ちゃんに【個人情報開示】を使った。


 

本名:剛力早苗【タップで画像表示】

性別:女

年齢:21歳【タップで生年月日表示】

国籍:日本

身長:164cm

体重:49kg【タップでスリーサイズ表示】

職業:ち◯ぽ狩り

住所:神座群分梅地区

電話番号:010-××××-××××

家族構成:なし

特記事項:スキル所持者【タップでスキル詳細】、幻視状態、処女


 うん、まず職業ち◯ぽ狩りにツッコみたくなるが。


 前回、名前を確認してすぐスキル詳細に飛んだから分からなかったが、コイツ処女なのか?

 しかも幻視状態……つまり本来の姿は別。

 それを証明するように、身長や体重も今の見た目と全然別だな。

 では、画像を表示……うわ、雰囲気めちゃくちゃ元嫁に似てる……まあつまり、外見は俺のどストライクだ……まあ俺は美沙ちゃんも、鏡子もどストライクなんだけどな、三振し続けてるってだけで。


 ちょうど俺が早苗ちゃんの情報を確認し終えた頃、二人の話も終わったようだ。

 

「つまり……国光がアタイを助けてくれたんだね?」


 国光? あ、俺か。


「そうだ。今、お前を死なせる訳にはいかない」


「ふふ、『じゅん』と来る事言ってくれるじゃないか」


 ……この下品な女と俺、相性いいの?

 本当に?



――――――――――――――――


あとがき


今後も週1か2くらいの更新を目指します。

よろしくお願いします。


あと、本作と同じ世界観の話を書いてます。



『台風の夜に「田んぼが心配だから見に行く」と出掛けたじーちゃんが『魔王』と名乗る女の子を拾って来た~「食事なんて栄養を摂取するための手段に過ぎぬ」だそうです~』


https://kakuyomu.jp/works/16818093088246195191


忠之は出てきませんが、特対のメンバーは出張参加してます。

灘さんとか田辺とか。

よろしければこちらもどうぞ。


どちらもカクコンに参加してます。

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帰還した勇者は性格が終わっている!~異世界から持ち帰った鑑定スキルが『個人情報開示』に進化したので、SNSのレスバ(※物理込み)で無双するなど~ 長谷川凸蔵@『俺追』コミカライズ連載中 @Totsuzou

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