最終話 配信者
「いよいよ……結婚式ですね……」
「うん……」
「あ、まどかちゃん来ましたよ」
アキラの家のお隣さん、円山家からまどかが出てくる。
「お待たせしました! このドレスどうでしょうか?」
ヒラヒラのピンク色の可愛らしいドレスを着るまどか。
「いい感じね! 私も今日の為にドレスを新調したの!」
◇
3人は式場に着く。
【金剛寺家 武者小路家 披露宴会場】と書かれた看板がそびえ立つ。
「すごい字面だな……戦国武将かな?」
ダンジョンが崩壊して2ヶ月が経った。
「まさかあの店長が本当に結婚するなんてね……」
婚約から20年経って入籍をした2人はいよいよ今日、結婚式を迎える。
◇
「お、おう……よく来てくれたな」
真っ白なタキシード姿の金剛寺が恥ずかしそうに言う。
「て、店長……ヤバいくらい似合いませんね……」
「う、うるせェ!」
金剛寺の生活は一変していた。
ダンジョンアイテムが全て消えてしまったこの世界。
南極から帰り、自分のアイテムショップに戻ると店の中は空っぽになっていた。
10年以上、コツコツと集めたダンジョンアイテムを全て失った金剛寺。
異世界での激闘、奇跡の生還からの突然のアイテムショップ廃業にはさすがに発狂したらしい。
そんな金剛寺はナオコと暮らし始めた。
20年の空白があったが、2人はすぐに昔のような元の生活に戻った。
「就活だよ、就活! くそっ! おいお前ら、俺も動画配信で稼げねェもんかな?」
虎石の現在はというと、
ダンジョンは消滅しダンジョン省はなくなったが、モンスター災害で壊された町の復興や被害者の支援をしている。
金剛寺とナオコもこのプロジェクトに加わるようだ。
錬成師の老婆 武者小路もダンジョンアイテムがなくなり、もう錬成することができないし、する必要もなくなった。
20年ぶりに帰ってきた孫と、金剛寺の家に住んでいる。
錬成師は引退し最近は占い師を始めた。よく当たると評判らしい。
柳生イッセイとイケメン剣士の御剣は、剣道教室を営んでいる。
「御剣くん、ワシはもう長くない……ゴホゴホ……
生徒の指導も教室の運営もすべて君に任せた!
売り上げは半分こじゃ!」
「はいっ! 先生!」
まだまだ元気な柳生に、御剣は大分こき使われているという噂だ。
そしてアキラたちはというと
アキラは世界を救った英雄に……なってはいなかった。
アキラたちが世界を救ったことを公表すれば、英雄になり生活には困らなかっただろう。
しかし、アキラはそれを断った。
『ははは、俺たちは金のために戦ったわけじゃないから』、と。
「……くそっ! 俺はなんであんなバカなことを言ってしまったんだぁ!」
過去のカッコつけた発言を後悔するアキラ。
「何言ってるんですか!? アキラさんがああ言ったから、みんな『まあそれでいいか』ってなっちゃったんじゃないですか!」
「いや……あの時はね、生きて帰ってこられただけで幸せだったんだ……チクショウ! せめてタワマンのローンの分だけでも政府からもらっておけばッ……!」
涙を流すアキラ。
「アキラちゃんねるさん……いつまでもグジグジとダサいですわね……」
呆れるまどかだった。
花子は元々の人気から本格的に芸能関係の仕事の誘いもあった。
しかし、それを全て断った。
「なんていうか……ダンジョンの戦いを経験しちゃって、芸能界ですら今の私にとってはヌルいっていうか……
まあ元々誰にも縛られず、配信で稼ぎたくてサラリーマン辞めたんですしね」
今でもアキラの事務所に転がり込んでいる。
「あーでも……どうせ消えちゃうなら、使ってないダンジョンアイテム売っておけばよかったなぁ……はぁ……」
まどかは今でも女子高生だ。
友達のいなかったまどかだったが、今ではすっかり大勢の友達に囲まれている。
ダンジョンは消滅し、ダンジョン配信者としての活動もなくなり、政府公認冒険者でなくなっても友達は離れなかった。
楽しい学園生活を送っている。
金剛寺の結婚式が終わり、3人はアキラの事務所に帰ってきた。
「さて、今日も始めようか?」
「はい! 今日は何でしたっけ?」
「はぁ……憂鬱ですわね……」
「よし、いくぞ。稼がねば……!!」
カメラをセットし、配信ボタンを押すとコメント欄が賑わい始める。
【お、始まった。こないだの激辛企画は最高だったな】
【今日は大食い企画だっけ?】
【花子さんとまどかちゃんの可愛さを見るだけのチャンネル】
【ダンジョンなくなってオワコン化すると思ってたけど、しぶとく生き残ってるなぁ】
【こいつらがダンジョン壊してこの世界を救ったって噂ホント??】
【実はこのアキラって俺の元部下なんだよねぇ】
【俺はコイツらのダンジョン配信好きだったけど、今の『アキラちゃんねる』も好きだよ】
「ゴホン……皆さんこんばんは! 『アキラちゃんねる』です!」
完
お読み頂きありがとうございました。
皆様の応援、コメントのおかげで最後まで書くことができました。
現在、次回作を作成です。
そちらもお楽しみ頂ければ嬉しいです。
最後にここまでの感想や★★★での評価する頂けると大変嬉しいです(^^)
底辺社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が!?流行りのダンジョン配信者になるのでこんなブラック企業は辞めさせていただきます。ダンジョン配信ガチ勢の美人がプロデューサーについた俺はトップ配信者を目指す さかいおさむ @sakai_osamu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます