❤王宮ラブレターコンテスト❤
亜逸
❤王宮ラブレターコンテスト❤
❤大賞作品❤
じょうおうさまへ
ぼくはあなたのことがだいすきです
このせかいでだれよりもだいすきです
ぼくはあなたことをぜったいにしあわせにできるじじんがあります
だからぼくとけっこんしてください
ぜったいにあなたのことをしあわせにしてみせますから
❤審査員評❤
・審査員A(大臣)
字も
一見して子供のものだとわかるラブレターだった。
だからこそ、驚かされた。
このラブレターを書いた子供の、女王様を幸せにするという絶対的な自信は、他の参加者たちとは一線を画するものがあったからだ。
自信が溢れすぎて最後の方は同じ内容が続いてしまっているが、それはまたご愛敬というもの。
惜しむらくは、子供ゆえの凡ミスか、自分の名前を書き記すのを忘れているのが痛い。
これでは景品を贈呈することができないではないか。
・審査員B(騎士団長)
このラブレターには、女王様を絶対に幸せにするという覚悟がある!
そしてなによりも!
国王様を差し置いて、誰よりも女王様を愛しているという自負がある!
他の参加者たちにはない、不敬など知ったことかと言わんばかりの愛!
これこそが、このラブレターを大賞に推した最大の理由だ!
以上!
・審査員C(侍従長)
文字も言葉もつたない。
だからこそ伝わる真心がある。
私はそのことを、このラブレターから学びました。
本当に一生懸命書いたのでしょう。
決して綺麗とは言えない震えた字が、ただただ愛おしいです。
・審査員D(女王)
さすがに皆、子供に甘すぎかと。
確かにこのラブレターからは愛と自信を感じましたが、それだけでこの名無しのラブレターを大賞に推すのは正直どうかと思いますわ。
これでは参加者たちに、初めから大賞の景品なんて渡す気がなかったと思われても仕方ありません。
ですのでわたくしは、この場を借りて、第二回ラブレターコンテストの開催を宣言させてもらいますわ。
† † †
「こここここれはどういうことじゃ!?」
泡を食うような勢いで部屋に入ってきた国王を、女王は柔和な笑みを浮かべながら
「ダメですよ、あなた。この国の王といえども、女性の部屋にノックもせずに入ってくるのは」
「そ、それはすまなか――……い、いや! 儂がノックを忘れてしまったのは、
女王は卓上の紅茶を優雅に一口啜ってから、事もなげに答える。
「それは、あなたのラブレターが素敵すぎて、皆に知ってもらいたかったからですわ」
からかっているようにしか聞こえない言葉だったが、女王の目があまりにも真剣だったため、国王は口ごもってしまう。
「そもそもこの王宮ラブレターコンテスト自体、あなたの素敵なラブレターを皆に知ってもらいたいと思って開いたもの。とはいえ、馬鹿正直にあなたの名前を書いて応募したら、わたくし以外の審査員が忖度して大賞に選出するのが目に見えていますわ。それでは、あなたのラブレターの素晴らしさを証明したことにはなりません」
「だから、匿名で応募したと?」
「ええ。とはいえ、わたくしの名前が書かれていた部分を『じょうおうさま』に変えたり、ラブレターを匿名にするために最後のあなたの名前を省く必要がありましたから、当時のあなたの筆跡を模写し、わたくし自らが新たにラブレターを書き起こして応募しましたが」
その際に手が震えてしまったことが、結果的に評価されたことには驚かされたましたけれど――と付け加えながら、女王は再び紅茶を一口啜る。
「わざわざそんな手の込んだ真似をしてまで、やることではなかろう」
ガックリと肩を落とす国王だったが、八歳の頃のラブレターを公表されたことについては、これ以上怒る気にはなれなかった。
皆に知ってもらいたい――そう思ってくれるほどに、自分が書いたラブレターを評価してくれたことは正直悪い気はしない。
たとえそれが、
「ところであなた。わたくし、ラブレターに限らず、あなたが愛を囁いた手紙は全て大事に保管してあるのですが……」
そんな女王の言葉を聞いた途端、国王の脳裏に、審査員D(女王)が第二回ラブレターコンテストの開催を宣言していたことを思い出す。
「ま、待て……早まるな……いくら匿名とはいえ、これ以上儂の恋文を皆に晒すのは……」
「いいえ、やめません。それにもう、応募は完了していますもの」
「なぁああぁあぁッ!? い、いつのだ!? いつの恋文を応募した!?」
「それは、あなたが一四歳の時にくれた――」
「よりにもよってその時のかぁああぁああぁあぁッ!!」
そして――
第二回においても、国王が女王に宛てたラブレターは、審査員特別賞を受賞するという好成績を収めた。
収めたから、結果発表とともにラブレターの内容が公表されたその日、国王は風邪を引いたと嘘をついて自室に引きこもり、悶絶した。
そのラブレターの内容は「拝啓 狂おしいほどに愛おしいマイエンジェル」から始まり、「あなたに会うために天から堕ちてきた†王宮の堕天使†より」で終わる、国王にとっては黒歴史全開の代物だった。
しかしこの時、国王は勿論、女王も夢にも思っていなかった。
まさかこの後「†王宮の堕天使†構文」が王宮中どころか、国中で流行するという、国王からしたら公開処刑どころではない事態に発展してしまうことになるとは……。
❤王宮ラブレターコンテスト❤ 亜逸 @assyukushoot
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