宝石みたいな美しい思い出

 いじめられっ子の少年と、その彼を突然恋人にしてしまった美少年との、重く切ない恋のお話。

 現代もののボーイズラブです。
 ネガティブで自責的な主人公、麗(うらら)くんと、明るく天真爛漫な美少年の茜くん。どちらかといえば可愛い感じのふたりが織りなす恋の物語。

 印象的なのは序盤の展開、いきなり恋人関係が成立するところ。
 急に降って沸いた(ように見える)美少年に、いきなり見染められて恋人にされてしまう、というある種強引な(ように見える)展開。この流れから「いちゃいちゃ感たっぷりの甘いラブコメ的なお話なのかな」と思えば、さにあらず。

 むしろそこからが本番というか、付き合っているのに(あるいはいればこそ)生じる決定的なすれ違いの、その重苦しさがとても素敵でした。
 なるほど、キャッチコピーの「仄暗い」に偽りなし。

 さりとて、単に暗い話というわけではもちろんなく。
 苦難を乗り越えた先のハッピーエンド、ふたりの思いの報われる瞬間がとても気持ちのいい物語でした。