こころにそそぐ【短歌廿首】

常陸乃ひかる

久方の散歩日和

日の長き梅雨ばいうのけらし 風のが移りゆくさま昨夏さくかと同じ


今晩こんばん 月魄げっぱくの降らぬうれい空 曇り硝子ガラスの雨粒を見る


もう13時いちじ あくびゴロゴロ ワンタップ まなこ開けば14時にじになりけり


やりたいと思い継続できぬさが 徐々に薄れるメタ認知かな


昼過ぎて カフェでお茶して 窓へだて 右手左手 傘のパレエド


下校する児童にねたみ抱きつつ ToDoトゥドゥリスト やれ白紙かな


かげる道どこへ続くか 一抹のゆうと遠雷、葉に落つ雫。


思い出す故郷の母と老猫ろうびょうと――頬の時雨しぐれが冷たくなっても。


久方の散歩日和の倦怠けんたいが、でいうほどリラクセーション。


明け方の外へいざなあまの音 街は薄くもベールをまとう


薄暗し けれど心は晴れ晴れと 夜気に重なる寝起きの吐息


街灯の光を浴びて踊る雨 西に東に顔にもモロに


首筋にぽとりと垂れる露先つゆさきの不快は、背中せなに心に注ぐ。


猫を抱きブランコを漕ぐ黒い影 濡れた輪郭ラインの悪寒忘れじ


帰宅して、布団に入り、まどろみて、眠気認めぬ通勤時間。


台風の通知をよこす気象庁! 心弾ませおやすみなさい!


――台風を強く望んだ昼過ぎに端末を見る、あす晴れと知る……。


ああイヤだ嫌だ厭だと嘆いても 言い訳できぬ朝焼けの圧


昨年の夏にポチった日焼け止め バッグの底で発掘作業


さあ行くか、異次元キメる絶望の世。心だけでもあさひを掲げて。

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