今後も助けてくれる、かな?
動物病院で気絶した私が目覚めると、全部夢だったかのように私は祖父母宅の居間のソファに横たわっていた。心配顔の両親が言うには、大鷲君が気絶した私を抱いて祖父母宅に戻ってくれたそうだ。
あんなに心配していた猫の容態と猫の幸せの確認よりも、彼が私こそを優先してくれた事に感謝するべきか。
いいや。
まず私を驚かせたことを許してあげる方が先だろう。
だって居間の戸口から、私のシン従兄が私を伺っているぞ。
心から申し訳ないと思っているだろう顔をした大鷲君は、私の所に謝りに来たみたいなんだよ。それでもって彼のその表情は、まるで捨てられて雨に打たれているような猫を思い起こさせる。
だからか、私は、おいで、なんて彼を呼んじゃってた。
「ごめんね。信用してもらえるには自分をさらけ出すことだって、かわさんが言っていたから」
私が気絶したのは、大鷲君の顔が猫になっていたから。
そしてそれが猫又な彼の本当の顔だと言うならば、大鷲君が悪いわけでは無い。
私の顔がウーパールーパーなのを変えられないのと同じこと、じゃない?
私は彼にびっくりしただけと答えた。
大鷲君は、金色の毛並みをした綺麗で可愛い猫の顔、を思い出させるような笑みで顔中をいっぱいにした。
「さすが五葉ちゃんだ。僕は君ならって思ったんだ。そしたらかわさんも五葉ちゃんなら絶対大丈夫だって言うから。今日は本当にありがとう」
僕は君ならって?
伯父さんが私を薦めるよりも先に君が私を選んだってこと?
いやいやいや、純粋に嬉しいなんて!!
「いや、私こそ」
そして私と大鷲君は友好的に別れ、月日は流れて四月になった。
つまり私は中学生になったのだ。
私は結局第一志望の学校に進学した。
大鷲君の言った通り、言うこと聞かなければ友達じゃない、なんて言ってくる人たちこそ友達じゃないし、そこで頭なんか下げたら一生彼女達の奴隷になるのは確実じゃないかって、私は気が付いたからだ。
私はそれで小学校時代の友は失ったが、今はこうして通いたくて頑張った中学校に通っている。小学校時代の友人がいないことで、新しくできた友人との交流に集中できるから、実はこれで良かったと思うような毎日である。
「ブスの癖に、いい気になって」
「親戚なんだってさ。逆に可哀想じゃね?差があり過ぎて」
どうして外見の事をまずあげつらわれなきゃいけないんだろう。
まだ発展途上の顔立ちなんだから、いくらだって変われるのに。
ママは入学前に私をカリスマ美容師の所に連れて行き、私が可愛らしくなるようにと、それはもうモンスターペアレントとなって彼に指示してくれた。
だからかな、このふわっとしてるのに軽やかなショートカットの自分がとっても可愛く見えて凄く好き。
私はガラス窓に微かに映る自分に少しいい気分でいたが、すぐに自分てなんて単純でつまらない顔立ちなんだろうと訂正する気持に落ち込んでしまった。
私が心無いやっかみを受ける理由、私の比較対象になって欲しくないぐらいの輝ける美少年が、私が映る横に映り込んできたのである。
なんちゃって制服じゃない、我が祥鳳大学付属学園のブレザー姿の彼が。
あの日に私に第一志望にこそ行けと言ったアドバイスは、私と同じ学校に通うための布石だったとは!!
「五葉ちゃん。今日はガレージで子供産んじゃった子からのSOS。一時に五匹だって。なかなかお得、だよね?」
私は大鷲君に振り返り、無理、と言った。
五匹分の里親探しは大変よ?
あなたが拾ったあの日のあの子、結局私が飼っているんだからね!!
先日拾った一匹も現在保護中よ?
そんな我が家の現状丸無視なのか、大鷲君は私に手を差し出した。
「僕は君がいてくれないと、でしょ?」
あの日の彼の真実の姿を見て私が思ってしまったのは、ホラー映画の化け猫化粧よりも、普通の猫の顔が巨大化しただけの方が怖いんだな、そんな感想だ。
あと、猫又という巨大猫が、一番小さな猫といわれるシンガプーラの顔をしていた事は皮肉この上ないのではないだろうか、とも思った。
そう、私は大鷲君を化け猫だと知っても、彼が嫌いにはなっていないのだ。
恐怖が消えたら、化け猫顔が可愛かったとしか思い出さないのよ?
だけどその代替なのか、化け猫飼いたい!!しか無かっただろう伯父をぶん殴りたい気持は私の中で日々燃え盛っている。
何が、警察に通報されない立ち回りが出来る常識を五葉は持っている、だ。
新しくできた従兄はNNNのエージェントでした 蔵前 @kurama-e
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