恋に落ちるまでの早さと、それを自覚するまでの遅さ

 学校を舞台に、とある少女の恋を描いたお話。

 まさに「恋!」といった趣の、現代ものの短編です。
 もう本当に甘酸っぱい! 思春期年代の少女のひとつの恋を、その発端からじっくり丁寧に綴る、その筆致というか主観視点の在り方そのものがもうたまりません。
 主人公自身の内心をそのまま活写しているため、その心の動きがダイレクトに伝わってくるところがとても好き。

 当人自身はいまいち恋を自覚していないというか、まだその始まりみたいな感覚でいるっぽい、のですけれど。
 その実、意識のほぼ100%が全部思い人たる先輩に持って行かれているのが、もう本当に良くて……!

 客観的にはちゃんと落ち着いている(別に暴走したり失敗したりはしていない)のですけれど、頭の中のこの加速ぶりというか、「好き」で埋め尽くされてる感覚そのものに悶えながら読みました。最高。

 タイトルや章題も好きです。「(仮)」にしておきたい、あるいは、自分ではそうだと思っている恋。
 遠慮のような予防線のような。恋にはつきもののある種の恐れのようなもの。最高……。
 とても爽やかで甘酸っぱい、素敵な恋のお話でした。単純に久保先輩の人物造形も好き!