恋焦がれて三十年……

苦行者の妨害のため地上へ送られた天女・銀波は、とある少年と出会い恋をします。まもなく少年は苦行を始めますが、銀波はそれが殺された母の仇を討つためだと思い三十年もの間見守りました。しかしついに我慢ならなくなり、彼の復讐を止めようとして苦行妨害のため天を降ります。そこで銀波は初めて、彼が苦行を始めた意味を知るのでした。
一国の王子が三十年を費やしてまで挑んだ苦行、その理由は何だったのか——。

レビューでこんなことを書くのは不適切かもしれませんが、あえてこの短編は極めてエロティックであると言いたい。だからと言って、ただただ淫猥なだけではないのです。包み隠さない率直な文章はまさにインド神話らしく、それでいてなまめかしい描写には極上の清らかさがあります。
天と人との恋の世界が、至高の美しさで彩られる。見るも鮮やかでディープなこの物語、心が洗われるようです。

一度読んでも素晴らしい、二度読めばなおおいしい、何度も読み返すほどに味の出る作品。オススメです。