73.コンボ発動

 ゴッ!!


 大地を割って現れたのは、巨大なムカデだ。

 デザートセンチピードという魔境『熱砂の谷』に生息する雑魚である。

 ただしその巨体は見上げるほどに大きく、全長は五メートルにも及ぶ。

 ここ『熱砂の谷』では魔物は基本的に涼しい地中に潜っており、獲物が現れたときにのみ地表に現れて奇襲を仕掛けてくる性質を持っている。


 とはいえこれだけ巨大な魔物が地中から這い出てくるのに前兆として地面の振動があるし、〈危険感知〉のあるマーシャさんがいるため襲撃を事前に察知し、準備万端で迎え撃つことができるわけだが。


「デカいけど素早いから、気をつけてふたりとも!!」


「わかったー!!」


「了解!! ――拙者、アリサでござる。いざ参らん!!」


 爆速で接近してからのアリサの〈居合い〉がデザートセンチピードの脚を何本か斬り飛ばした。


 マーシャさんの剛弓が頭部付近を狙い、矢が突き刺さる。


 俺も〈アイスボルト〉を放った。

 タマが追従して氷の礫を放つ。

 〈使い魔:攻撃指示〉によりタマが放つ礫はふたつに増えており、些細ではあるが攻撃力の上昇に一役買っている。


 ディアーネが掲げた盾でそのまま殴りつけ、斬撃を見舞う。


 ダメージに身をくねらせながら、うねる巨体が前衛たちを襲う。

 既に納刀していたアリサは素早く駆け抜け、ムカデの横をすり抜けた。

 ディアーネは盾で巨体を受け止めるが、大質量に押しつぶされて地面にめり込んだ。


「〈フロストハンド〉!!」


 俺は悪魔召喚の魔法を行使した。

 巨大な氷の手が現れて、デザートセンチピードを掴む。

 バキバキと音を立てて凍結していく巨大ムカデ。


 【魔女】ウィッチの氷属性の悪魔、フロストハンドは見ての通り巨大な氷の手の化け物だ。

 〈凍結付与〉が乗るため、掴まれた相手はどんどん凍っていく。

 消費MPは四点だが、〈MP軽減Ⅱ〉で二点に軽減されている。


「これで――ッ」


 マーシャさんがデザートセンチピードの片目を射抜いた。

 片目を失いもんどり打つムカデに、アリサが追撃の一閃を放つ。

 胴体を貫く雷光は、地中にめり込んだディアーネの剣の能力だ。


 生命力の高いデザートセンチピードだ、これくらいではまだ死なない。


 俺たちは徐々に動きが鈍っていく魔物を相手に、攻撃を仕掛け続けた。




「……これだけ戦って、一銭にもならないなんて」


 マーシャさんが不満そうにため息をついた。

 基本的にここ『熱砂の谷』の魔物は金にならない。

 デザートセンチピードの甲殻は防具にするのに適しているものの、他にもっと弱い魔物から同等の性能の防具が作れるため、引き取り手がないのだ。


 俺は目減りしてやや大きさを減じたフロストハンドに、〈アイスボルト〉を打ち込む。

 氷属性を吸収するフロストハンドは、送還しない限りこのようにして回復させて戦わせ続けることができる。

 消費MPがゼロの〈アイスボルト〉だから、フロストハンドが破壊されない限りは非戦闘時にHPを最大まで回復させて、延々と戦わせ続けられるのである。

 消費MP二点で強力な仲間が増える悪魔召喚コンボである。


「まあまあ。宝箱が出てくれば、黒字だから」


 俺はマーシャさんをなだめる。

 〈アナライズ〉と〈エヴァンゲル〉があるため、難易度の高いこの魔境の宝箱から出るお宝を売却すれば、あっという間に稼げるのである。

 もちろん有用な装備品などであれば売らずに換装するのだけど。


「う~~~、砂まみれだよぉ」


 鎧を緩めながら隙間から中に入った砂を排出しているのはディアーネだ。

 あの巨体の攻撃を受けても地面にめり込んだだけで、無傷なのはさすがである。


「しかしここは暑いでござるな」


 汗を拭っているのはアリサだ。

 確かに『熱砂の谷』というだけあって暑い。

 だが湿度の低いカラっとした暑さで不快指数はそれほどでもない。

 身体を動かす前衛ふたりはそれでも暑いだろうが。


 ……いや、俺の横にデカい氷の塊がいるから涼しいんだけどな。


 フロストハンドの放つひんやりした冷気に手をかざしながら、俺は空を見上げた。


 太陽がさんさんと輝いている。

 さあ、魔物を倒してSPを稼いで、新しいクラスとスキルを習得しよう。

 【魔女】ウィッチの上級クラスである【大魔女】エルダーウィッチになれば、〈ファミリア〉と〈フロストハンド〉をさらに強化できる。


 TS転生無双はまだまだこれからなのだ。


 ◆


《名前 レイシア 年齢 10 性別 女

 クラス 【魔女】ウィッチ

 パッシブスキル

 〈MP軽減Ⅱ〉

 〈凍結付与〉

 〈高速詠唱〉

 〈ファミリア〉

 アクションスキル

 〈使い魔:攻撃指示〉

 〈フロストハンド〉

 〈アイスボルト〉

 〈ブリザード〉

 〈レイ〉

 〈ヒーリング〉

 〈ディスペル〉

 控えスキル

 〈農民の証〉

 〈大魔術師の証〉

 〈魔法使いの証〉

 〈魔女の証〉

 〈司祭の証〉

 〈司教の証〉

 〈農業Ⅰ〉

 〈MP軽減〉

 〈回復量増加〉

 〈回復量増加Ⅱ〉

 〈回復量増加Ⅲ〉

 〈槍・刺突〉

 〈投石〉

 〈ストーンハンマー〉

 〈ウォータースピア〉

 〈ウィンドカッター〉

 〈リストアヘルス〉

 〈エヴァンゲル〉

 〈アナライズ〉

 》


《スキルセット:回復特化

 クラス 【司教】ビショップ

 パッシブスキル

 〈高速詠唱〉

 〈回復量増加〉

 〈回復量増加Ⅱ〉

 〈回復量増加Ⅲ〉

 アクションスキル

 〈ヒーリング〉

 〈リストアヘルス〉

 〈エヴァンゲル〉

 〈ディスペル〉

 〈アナライズ〉

 》


 俺たちの戦いはこれからだ!!

 ……というわけで、トゥエルブ、いかがでしたでしょうか。

 あまりブックマークとか伸びていないので、イマイチだったかなあ?

 最後の方は伸びていた気がするので、続けたらまた違ったかもしれませんが。

 まあ一話が短いので読み応えもないし、主人公レイシアが強くなるのが最後の最後という構成の悪さも手伝って爽快感もなかったですし、反省する部分は多かったですね。

 執筆習慣が途切れていたのでリハビリに書き始めたのですが、『トゥエルブ』のゲームシステムは個人的に気に入っています。

 できれば次はステータスバグの更新といきたいところですが……ちょっと書いては消してを繰り返していてなかなか進みません。

 そんな塩梅なので、期待せずにお待ち下さい。

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トゥエルブ ~TS転生した世界は俺がやり込んだゲームにそっくり!12のスキルでシナジーとコンボを駆使する~ イ尹口欠 @14ibuki

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