――時計のない町がある、たった一つの大きな鐘楼。
その鐘楼守のリゲルは、街に時を知らせていました。
寒くて暗くて一人で時を知らせなければならない仕事。
そんなリゲルの元に、現れたのは老龍でした。
「水をくれたお礼に、願いをひとつ叶えよう。わしにできることならなんでもかまわんよ」
「ここじゃないどこかに行きたい。あの水平線の向こうがわに行ってみたいんだよ」
そうして少年と老龍は、旅に出ました。
さまざまなことを経験するリゲルでしたが、最後にたどり着いたのは竜の骨が眠る森。
老龍は、自分の過去を語ります…
何かを手にするには、手が空いていなければならない。
自分が持っているもの。それを手放したら、取り返しのつかないことが起きるかもしれない。
けれど、新しいことの中には楽しいことだって起きる。
そして、なくしたものは元には戻らないけれど、大切なものは形を変えていつまでも。