第4話 落ち着かない幼馴染

 あれから普段なら配信をしてる時間さえ気にせず、我武者羅にゲームををやりまくり。


 どこか心に余裕ができた翌日。


 俺は朝だというのに元気に鼻歌を歌いながら歩いている人、千里と二人で学校に向かっている。


「今日はご機嫌じゃん」


「ん〜? いつもこんな感じだと思うんだけど。そんなことより、しんちゃんはご機嫌斜めだね。なにかあったの?」

  

 さすが俺の幼馴染。余裕ができて、表に出さないようにしてたけどわかるのか。


「実は俺が片思いしてた人に好きな人がいて……」


「えっ!?」


 千里は大きな声を出し、その場に止まってしまった。

 

 まるで俺が言ったことが自分のことのように、オロオロした顔になっている。

 俺に気を使ってオーバーリアクションしてくれてるんだろう。優しいな。


「し、しんちゃんって片思いしてる人い、いるの?」


「あぁ、まぁな」


「へ、へ、へぇー……」

 

 そういえば、千里には奈々瀬さんこと一度も喋ったことないから知らないのか。


「まだこの話に続きがあるんだけど、その片思いしてる人の好きな人……配信者らしいんだよ」


「ふーん」 


「千里的に俺って今の状況からどうにかできると思う?」


「無理だね」


 言うのが辛いのか、顔を合わせず暗い声で言ってきた。


「諦めた方がいい。人生、諦めっていうのも大切だと思うよ」


 たしかにその通りだ。

 けど、片想いは諦めきれない。

 もしかして千里、俺の決心が揺らがないようわざと悪役になろうとしているのか?


「ありがとう。絶対諦めない!!」


「え。あー……そ、そうなんだ。本当に諦めてほしいんだけど」


 最後の方、ゴニョゴニョなにか言ってたけど小声だし大したことないだろう。


 にしても千里ってば、幼馴染だけあって俺が考えてることを手に取るようにわかるんだな。

 

「今相談乗ってもらったし、俺も千里の相談乗るよ。ご機嫌だったけど、なんかある?」


「じ、実は私片思いしてる人がいて」


「ほう」


 千里から恋愛の「れ」の字も聞いたことないから、思わず前のめりになってしまった。

 それも、片想い。俺と同じじゃないか。

 普段はまともな相談相手になれてないが、同志としていい返答ができそうだ。


「その人にずっとアピールしてるんだけど、全然気づいてもらえなくて困ってる」


「ほうほう」


 そりゃ大変だ。


「それ、千里はなにも悪くないな」


「だよね!」


「お、おう。悪いのは100パーセント男だ。……でも、それでも片思いしてるってことはそれを差し引いても好きってことだよな?」


「うん。どうしたら気づいてもらえると思う?」


「うーむ……。アピールしてダメなら逆に距離をおくとか?」


「なるほどなるほど」

 

 千里は俺と二人で登校しているのを忘れているのか、小声でブツブツ呟き始めた。


 ネット記事の受け売りだけど、納得してくれたみたい。

 俺はアピールするほどの強い心がない。なので、頑張ってアピールしる千里はそれだけですごい。

 でも、改めて考えてアピールしても気づいてくれないなんてかわいそうだな。もし千里が片思いしてる男がいたら一発叩き起こしたいものだ。

 

 って、それより俺は自分のことを考えないと。


 そういえば今日、オンラインで昨日教えてもらったところを復習するとか言ってた気がする。

 

 オンラインはリアルで会うより気楽だし。

 その片思いしてる配信者のこと根掘り葉掘り聞いて、強い心を持って自分のことをアピールしないとな……。





【あとがき】

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美人だけど初心な家庭教師のお姉さんにはガチ恋してる配信者がいるらしい でずな @Dezuna

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