佐々木くん

クロノヒョウ

第1話



 僕の友達は宇宙人だ。


 どこの星から来たのか地球に何をしに来たのかわからないけど佐々木くんはとにかく優しい。


 僕が転んで膝をすりむいた時は佐々木くんが指一本ですぐに傷を治して綺麗にしてくれる。


 僕が授業中に先生に当てられて答えられないでいると頭の中にテレパシーというやつで答えを教えてくれる。


 給食で嫌いなものが出てきて食べれないでいると佐々木くんがそれを破壊して消してくれる。


 ドッジボールでは同じチームにならないと誰も佐々木くんには勝てない。


 プリントを配るのは早いからいつも佐々木くんだ。


「はじめまして、佐々木です。ボクは宇宙人です」


 佐々木くんが転校して来た時、みんなが佐々木くんをバカにしていた。


 でも僕はどうしても佐々木くんと仲良くなりたくてみんなを怒った。


「僕たちだって宇宙に住んでるし佐々木くんから見れば僕たちの方が宇宙人じゃないか」


 普段怒らない僕がそう叫んだからか、みんなはそれから何も言わなくなった。


 そして僕は佐々木くんと仲良くなった。


 宇宙人と友達になったんだ。


 学校に行く時も帰る時も佐々木くんと一緒。


 うちにもよく遊びにくる。


 佐々木くんは僕のママのご飯をおいしいおいしいって嬉しそうに食べてくれる。


 ママも佐々木くんのことがお気に入りだ。


 ただ、佐々木くんはもうすぐ自分の星に帰らないといけないらしい。


「ねえ、本当に帰っちゃうの?」


「うん……」


「寂しいよ僕」


「一緒にくる?」


「えっ? 佐々木くんの星に?」


「うん」


「行きたい! 僕佐々木くんと一緒に行きたいよ!」


「でも、ママに会えなくなるよ?」


「ママに……そっか」


 佐々木くんと離れるのも寂しいけど、ママに会えなくなるのも困るな。


「きっとまた会えるよ」


「うん。また来てよ」


 そしてお別れの日。


 みんなで学校の運動場に集まった。


 先生もクラスのみんなも佐々木くんにお別れの挨拶をした。


「みんな、本当にありがとう」


 佐々木くんは嬉しそうにしながらたくさんある触手をいつまでも振り続けていた。


 もう僕が転んでもあのネバネバした触手で傷を治してもらうことは出来ない。


 耳から入ってくる触手に答えを教えてもらうこともなくなる。


 あの伸び縮みする触手があったからドッジボール大会で優勝することができたんだ。


 プリントが一瞬で配られることもなくなるし。


「さようなら、ありがとう佐々木くん」


 緑色のドロドロした体で学校を出る佐々木くん。


 佐々木くんが見えなくなるまで僕たちはずっと手を振り続けていた。




           完





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佐々木くん クロノヒョウ @kurono-hyo

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