小さな食のアルバム

 さまざまなメニューとともに綴られた、小さな思い出の断片のお話。

 エッセイ集です。それも一話あたりわずか500文字程度の小品。
 とってもよかった……この読後感、今の〝この感じ〟をどう紹介すれば伝わるやら、まるで想像がつかないのが困りもの。
 こういう〝言い換えの効かない面白さ〟、本当に好きです。

 各話につながりはなく、それぞれ別の思い出の断片といった趣なのですけれど、しかし唯一共通しているのが、必ずなんらかの食事の一品(とその作り方)が出てくること。
 本当にタイトル通りの内容なのですけれど、しかしその食を通じて語られる小さな逸話が、もう本当にビリビリ胸に染みて……。
 個人的にあんまり食に興味のない方なんですけど、こういう「一個一個のメニューにあるドラマ」みたいなの、たまらなく好きです。

 自然で静かな語り口の魅力もあり、とても素敵な作品でした。
 分量がコンパクトで読みやすいところも含めて、大変おすすめのエッセイです。