エピローグ

 奈々の家に着き、彼女が風呂へと消える。


 僕たちを襲ったあの三人が親に連れられて謝りにきていた。情報が伝わったのか、里の中は活気が溢れている。ようやく里の呪縛もとけた。里を出る人、残る人。それぞれの人生が待っている。長は今どうしているだろう。後で親父の話を聞かないと。


 数十分の間、色々考えて一つの結論を出す。親父は許してくれるかな? 風呂場の入口で彼女が浴室から脱衣所に出るのを待って、それを僕は口にした。


「なあ奈々。僕、ずっと里に居てもいいかな?」


 急に入口が開くと大きな手ぬぐいに包まれた奈々が僕に抱き着いた。石鹸の良い匂いが立ち込める。傷跡が痛々しい。背中から両肩を掴み少し離す。初めて彼女が見せる涙に動揺しながら、何か言うのを待った。奈々が腕で涙をぬぐう。


「おかえり、爽!」


「ただいま」


 きっとこの先、彼女には頭があがらないんだろうな、と思いつつも笑顔が尽きる事はなかった。





          

                                  終わり







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夢夢夢夢夢 神原 @kannbara

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