好きになってよかった

@AI_isekai

「好きな人」

私には好きな人がいる。


最近、無意識に「私、あの人こと好きだ」なんて言ってしまったときから変に意識してしまってあの人への返事もぎこちなくなってしまったように感じる。


あの人の顔も直視することが出来なくなってしまった。


優しくて、かっこよくて、安直な理由だけどきっとそれがあの人を好きになった理由なんだと思う。


でも、私はあの人のことを深く考えたくない。

私の友達も、あの人のことが好きだから。友達のほうが、先に好きだったから。


だから、私はそのことを友達には言わずそっと胸の扉にしまい込もうとする。でもどうしてだろう。ちゃんと、鍵もかけたのにドンドンと扉を叩く音が聞こえる。


何かが、外に出ようとしているけど。

「出たらダメ」

そんなことを、毎日言い聞かせている。


あの人に「大丈夫か? 体調でも悪いのか?」と、寝不足でふらふら廊下を歩いていたときに介抱してもらったときからだ。


その扉が開いたのは。


口のチャックは、なんとか締めれたけど心の扉はもう開いてしまったし鍵も捨ててしまった。


でも、この恋はダメなこと—―なんて毎日言い聞かせるのも辛くて。

ついに、玉砕覚悟で愛を伝えようって決めてしまった。


決めてからは、眠れなくて頭の回転も逆に回り始めちゃって浮かれてた。

だから、あの人を見ると周りが見えなくなっちゃって。


信号を無視して、迫ってくるトラックに気づかなかった。





あ——……































……私どうなったんだろ


妙に俯瞰的に見ることが出来ている自分に驚いたけど、死ぬときってこんな感じなのかな。

カシャカシャと無機質な、音が聞こえる。多分、この光景を保存している人が何人もいるのだろう。


遠くから、声がかすかに聞こえる。


「ぉぃ…!おい!」


この声、あの人かな……?


「写真なんか取ってないで、警察を……誰か!」


あの人が、私の近くにすり寄ってきて応急処置をしてくれているのを肌で感じる。

ありがとうって言いたいのにもう、目も口も—―使えないみたい。


「大丈夫だ、今……助ける、から!」


あの人が誰かに頼んでたりサイレンの音とかも聞こえたけど、意識はだんだん奥深くへと沈んでいく。








後悔しかない人生だったけど、








あの人のことを好きになってよかった。





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