第31話 バッドエンドと続き
<兄> ♠️
やかましい目覚まし時計がなる。
妹が俺をホールドしていないので、サッと起きることができる。
ラジオをつける。
パソコンに向かう。
こないだ出した小説が売れたらしい。
空梨さんから、続編を出さないかと言われたので、昨日から書き始めた。バッドエンドだから、再生を書いたらウケるというのだ。
続編を書くのは初めてだったので、最初は手間取ったが、主人公を変えることで、なんとか物語の形にはなりそうだ。
ところで、最近、おやつカルパスにハマっている。
妹がバイト先の駄菓子屋さんから大量の駄菓子を買って帰ってきていた時期、俺も少し分けてもらっていた。
俺は、妹ほど駄菓子が好きなわけではなかったので、少量で十分だったのだが、このおやつカルパスは、食べたら、手がほぼ無意識に次のおやつカルパスに伸びている吸引力があった。
しかし、もっとほしいと妹に言うのが恥ずかしかったので、後日、コンビニで50本くらい買った。
店員さんがレジで数えるのが大変そうだった。申し訳ないことをした。
その日から、妹に隠れておやつカルパスを食べる生活が続いた。
しかし、半年ほど前に妹がご老人の家に引っ越したので、いよいよ好きなだけ食べることができた。
最近は、ご飯代わりにしてしまうこともある。
自分でもよくないと分かっているのだが、止めることができない。
微かな吐き気が常にある状態が続いている。
さらに、飲み物は栄養ドリンクを基本的に飲んでいる。1日に何本も飲んでしまっている。
寝るのも上手くいかないが、文章を書くのに何故か支障はない。
もう、小説を書くか、おやつカルパス、栄養ドリンクを摂取するしかやる気がしない。
もちろん、そんな人間が住んでいる部屋がまともなわけがない。
まず、本人からしても酷い匂いが充満していることが自覚せざるを得ない。
体臭とおやつカルパス、栄養ドリンクの匂いが混ざって、不快な匂いになっている。
部屋も、おやつカルパスのパッケージと栄養ドリンクの空き瓶が散乱していて、埃や虫の死骸で、移動するのがちょっと怖い。
「・・・トイレ」
こればっかりは移動するしかない。
どこが安全か確認しながらトイレに向かっていると、ドアチャイムがなる。
なんだろう。宗教だろうか。
しかし、それでも良い気がした。
誰でも良いから、会話をしたい。
ドアホンも見ずに玄関を開ける。
「あーあー。やっぱりこうなってましたか」
かつての妹とほぼ同じことを言う女性。
「とりあえず、まともなもんを食べて下さい」
白飯と肉じゃが入ったタッパーを渡してくる。
「ありがとうございます、空梨さん」
「妹さんに頼まれたんですよ」
にへらと笑ってそう言って、家に上がる。
バッドエンドかと思っただろうか。
それでも良かったのだが、小説が終わってもキャラクター達の人生は続く。
終わったと思った人生も、理不尽に続く。
俺は、そんな読者には蛇足に思える蛇足を今、書いている。
初めての続編を書いていて、こういうおまけのような人生の方が長いことに気づいた。
上手く行くか分からないが、書いてみよう。
バッドエンドの続きを。
バッドエンドの続き ガビ @adatitosimamura
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