明治日本に似た別のどこか、あやかし、鬼、退妖師、そして組紐!なんだかもうこれだけでありがとうございますと言いたくなるこのお話。
自分の置かれた状況の不遇さを自覚していなかったヒロインが、ヒーローとの出会いで徐々に徐々に変わっていきます。
彼女を変えるのはヒーローだけじゃなくてその周りも。生き生きとした登場人物達が諦めきったヒロインにじわじわ影響を与えるのです。
読んでいるうちにヒロインに対して「もっと欲を持っていいんだよ!」と妙な親心が芽生えます。彼女の味方には「いいぞもっとやれ!」、嫌なこと言う人には「塩蒔くぞ!!」と、見守るどころか口を出したく(?)なるほど入り込みました。
なんだったらヒーローに対しても「もうちょっと……こう!」とか「よしよくやった」と言いたくなります。もう出てくる人みんな見守りたい。
続きが凄く気になるのに、中編コンテスト用に「ここからがいいところなのに……!」というところまでで今は止められているので生殺し……しかしそこも楽しみます。楽しんでみせます。
そんな余韻に浸りつつ、続きを読める日を心待ちにしています。
舞台は人とあやかしが住まう桜和ノ國。
あやかしから受けた呪いにより、左半身はアザに侵され、声は老人のようにしわがれている少女、透緒子。八歳以前の記憶がほとんどない彼女は、ある特殊な能力を持っていました。
あやかしが明るい日の下で生きていくためには面隠しと組紐が必要だという設定がとてもおもしろいです。
ヒロインの透緒子は、その組紐を組む組師なんですが、これがまた非常に不憫な境遇でして。けれどそのことに本人が気づいていません。むしろ自分を住まわせてくれていた養親に大恩を感じています(なんてこった)。
そんな彼女も、帝都を守護する退妖師の朔灯や、彼の屋敷に住まうあやかしたちとのふれあいによってすこしずつ変わりはじめ……?
こちら中編コンテスト用なので、いろいろ途中です。
透緒子さん謎だらけだし、朔灯さまもなにやら抱えていそうだし! 変えるよ。きっとこの恋は世界を変えるよ!(予感)というところでおわってます。
なにがいいたいのか、といえば決まっているでしょう。つづきを! つづきをくださいいぃい……!!
とり乱しました。だって、大好きな世界観なんですもの。
そんなわけで(?)最後にひとつ。
夫婦鬼の善さんと妙江さんが好きです。あと標霊(すえだま)ちゃんたちがかわいすぎます。およめたん……。
不憫で不幸であることの自覚のないヒロインが、ヒーローやその家族によって、暖かくほわほわにされるお話が好きなら、是非、読んで欲しいお話です。
そして。
キャラクターが生きている。
様々なタイプのキャラが登場しますが、皆、いきいきとしていて虜になってしまう魅力があります。
私は作中のとあるマスコット的なあやかしに、すべてを持っていかれました。めちゃくちゃ可愛い……好き。もさもさわらわらいて欲しい。
ヒロインの周りのキャラクター達が暖かく、とても癒されます。
早く幸せになって欲しいという願いと、けれどヒロインが不幸を自覚してしまうのは切ない…という相反する思いを抱かせるお話作りは見事です。
ヒロインがじわじわ甘やかされて幸福を知り、けれど素直に幸せを受け取れずに葛藤するお話や、暖かい「家族」に包まれてふわふわにされてしまうヒロインなどがお好きな方に、めちゃくちゃおすすめしたいお話です!