第26話 だいにのげえむ④
逡巡。
推理小説で探偵が場の全員に推理を披露する時、どういう心持なのだろうか。
どんな確証を以て、確信を以て、推理を口にするのだろうか。結局のところ人は、「何処までも主観的な生き物だ。いかな完璧な推理とて、個人の内面世界から事実を撫でた一面的な物に過ぎない。
あるいは推理小説で、登場人物一覧を眺めながら「こいつは怪しいなあ」とか呟きながら犯人(仮)を当てずっぽうに指名していき、その中の誰かが犯人だったのなら正解、とでもしてしまうような愚かな読者のように。
「全く、思った以上にくだらねえゲームだぜ、これは」ツガムラが舌打つように口にする。全く以て同感だった。
黒幕の掌の上で転がされ始めている。簡単で良心的なゲームをそのまま額面通りに受け取らなかった結果として、他のところに一瞬でも気を取られた過程として、僕はこの通りの醜態を晒している。
「宴会場」への入室の権利とやらが得られれば、この椅子に縛り付けられているという哀れな状況から脱出する術もあったかもしれないのに。この中で僕が最もこのゲームに真剣に取り組まねばならないんじゃなかったのか。椅子に縛り付けられているなんて、自分の意志で体を動かせないなんて、最も重いハンデと言っても過言ではないのに。
しかし僕が何も行動らしき行動を起こさず、ただ見ていただけなのも事実である。つまりはそういうことだ。考えているだけでは何も始まらない。
考えることと実際にそのように行動するのには大きな隔たりがある。頭の中だけではいつまでも名作な創作の題材やいつまでも言い出せずに伝えられない恋心と同じだ。表明しなければ、表さなければ、それはないのと同じ。
《以上で第二のゲームを終了します。現状の確認を行います。探偵数、六。被害者数、一》
電子音で合成されてなお嘲笑うような、黒幕の声だった。
《次のg-無も頑張ッテ下さい》
Solid Seven Solutions ~軟禁された七人の探偵~ 雪本つぐみ @alright3
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