エピローグ

 あれから7日が経った。


 魔王の計画は阻止され、今はいつも通りの毎日を送っている。

 地元の街に戻ったコスモとユリは、自宅でティータイムを楽しんでいる所だ。


「ユリ……消えないよね?」

「だから、大丈夫ですって! ちゃんとここにいます!」


 なぜコスモがユリが消えないかの心配をしているのか?

 その答えは、ヨシムラの爆弾発言にあった。


 魔王はあの後、魔剣の力で回復し、動けるようになった。

 その後、ヨシムラと魔王は意気投合し、ヨシムラも魔族の元に行くこととなった。


 ここまでは良い。

 だが、去り際に言った言葉が問題だったのだ。



『しばらく会えなくなるの寂しいよん♪

あっ、そうだ! 言い忘れていたことがあったよん♪』


 なにやら照れているようだ。

 頭をかいている。


『実はねん♪ あの事故……私がこの時代のこの惑星に来た事故のことねん♪

あれ実は来たの私だけじゃなかったんだよねん♪』


『え!?』


 コスモは驚いた。

 あの時は誤魔化されたが、やっぱりそうだったのか。


『そうだったんですか……』


『そうだよん♪ その人物とは……なんと、当時赤ちゃんだった、ユリちゃんでーす!』


『は?』


 ユリが地球人だって……?

 いや、別に人間じゃないのが問題ではない。


 問題なのは、そんな大事なことをなぜ、今になって言ったのかだ。


『そんな顔しないでよん♪ だって先にこれ言ってたら、コスモちゃん絶対計画阻止するの迷っちゃうでしょん? 私どうしても実験がしたかったのん♪ 許してねん♪』


 ということはだ。

 ヨシムラの見解が外れていたら、ヨシムラだけでなく、ユリも消滅していたのだ。


『それだけじゃないよん♪

私の見解が間違っていたら、私が来た時代の地球人も全員消えていたってことになるからねん♪

いやー! 本当に良かったよん♪

終わり良ければ総て良し♪ いい言葉だねん♪ じゃあねん♪』


 逃げるように、ヨシムラは魔王と共に異空間に飛び込んでいった。


 ちなみに、この真実が話される前は、これからの技術の発展に胸を躍らせ、ニヤニヤしていた魔王だったがいつの間にか真顔になっていた。


 おそらく、ドン引きしていたのだろう。



「本当にびっくりですよ!

でも……私はその真実を知っていたとしても、計画を阻止するようにコスモさんに頼んでいたと思います。

私達にとっての未来は、まだ決まっていませんから!」


 確かに、ユリならそう言いそうなのが、コスモは用意に想像できた。


「けど、ユリが地球人……つまり、魔族ってことはスキルは……」


 そう、地球人はスキルも魔法も使えない。

 ということは、ユリにはスキル自体が眠っていないのだろう。


「それはもう気にしないって言ったじゃないですか!」

「いやでも、期待させた私がなんか悪者みたいに……」

「気にしてませんって!」


 そうは言っても、可能性がほぼ0になったのだ。

 最初は大器晩成で、今は解放できないスキルだとか言っていたのだが、コスモの予想は完全にハズれたことになる。


「もうっ!」


 そう言うと、ユリがコスモの口を、自身の口を使って閉じさせる。

 要するにキスだ。


「あんまり暗い顔してると、駄目ですよ!」

「あ、うん、分かった」


 突然のことで驚いてしまった。

 未だに恋愛のことは分からないコスモだが、ほんの少しだけ、分かって来たかもしれない。


「あれ?」


「どうしたんですか?」


 ユリは地球人だ。

 では、なぜコスモを好きになったのだろうか?


「地球人って男性と女性に分かれてるって言ってたでしょ?

それで、男性と女性で生殖を行うって、ヨシムラさんは言ってた。

なのに……ユリはどうして女の子の私を好きになったのかなって」


 ユリは顔を赤らめる。


「確かに……どうしてでしょう?

おまけに、外見は似ていても内部構造は違う訳で、結局は違う生物でもあるんですよね!?

私って変態なんですか!?」


 ユリがあたふたし始めた。

 コスモはそんなユリの頭を撫でる。


「まぁ、理由なんて、どうでもいいと思う」


 そう、理由なんてどうでもいいのだ。


 大事なのは自分がなにをしたいと思うかだ。


 コスモはそう思った。

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超レア&強力スキル【剣聖】を手に入れた少女、実家から追放された少女を誘い、勇者を目指します!~剣聖スキルが強すぎちゃって無双!? 仮に追放少女の才能が開花されても、他のパーティには渡さない!~ 琴珠 @kotodama22

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