第10話 魔王様にはさらなる、“愛”と“憎”を
「今回集まってもらったのは事前に通達した通り、再び勇者なる者が現れたという情報を掴んだということです」
進行役は魔王様の側近であるヴァンレイド様です。我々将軍の地位にあるモノは円卓を囲むように席に付いており、各副官は背後に控えている状況です。
そして、一際大きな席の隣に側近ヴァンレイド様が立っておられますが、魔王様が座るはずの席は空席です。きっとそろそろ限界だと言われている聖女に付き添っているのでしょう。
「第十三将軍イオ。報告しなさい」
「わかったよー」
ヴァンレイド様に名を呼ばれて、かるい口調で立ち上がったのは魔鼠のイオです。
見た目は人の大きさのドブネズミです。どっしりとした身体に灰色のふかふかの毛並みをまとい、白目がないつぶらな瞳で周りを見渡しながら、よっこいせと掛け声と共に立ち上がったのです。その姿をカワイイという配下の者もいますが、私はどちらかというとデカすぎでキモいというのが正直な感想です。
「配下のモノたちの報告によるとねー」
魔鼠は世界各国に散っており情報収集を行うことが仕事として充てがわれています。鼠はどこでもいますから、人は誰も不審がることはありません。ただ戦闘能力としては皆無ですので、第十三の地位を与えられています。私が思うにイオ自身にやる気が無いだけで、何億という魔鼠を配下にしているイオはある意味最強ではないかと内心考えています。
「勇者たちは突然現れたらしいよー」
勇者
「これが見てきたヤツねー」
イオの体の割に小さな手の上には一匹の小さな魔鼠がいます。その魔鼠をイオは円卓の中央に投げ、『えい』という掛け声と共に魔鼠が爆ぜました。その魔鼠が爆ぜた場所には薄ぼんやりとした大きな球体が浮かび、何かの映像を映しています。
広い室内を斜め上から見た映像のようです。そこには円状に人が並び、何やら儀式を行っているようです。いつも思いますが何故音声が付いていないのでしょう。
そして、映像が光に満たされたと思えば、次の瞬間に複数の人影が画面中央に現れたのです。それも皆同じ服装をまとって。
その映像に私は思わず立ち上がって、映し出された者たちをガン見します。
「まさか集団召喚」
うわ言のように映像の状況を口にしました。やられた。本来の未来から外れたことで世界は修正調整を行ってきたのでしょう。
一人ひと人が何かしらのチート属性を与えられた集団。クラスという一個の集まりはある種の団結力を生み出し、一人では敵わない敵でも討ち滅ぼす力があります。
ここまでの事をしますか?魔王様が魔王でいる世界が気に入らないのですか?
違いますね。一つは異界の知識を持つ私に対抗するために異界から呼び寄せ、ーつは魔王の血と力を持つアベルは恐らく世界としては世界の調和を乱すものを滅ぼす為に複数用意したという感じでしょうか?
「第三将軍淫魔のリリーベル。これが何を意味するのか知っているのですか?」
側近のヴァンレイド様が私に聞いてきました。恐らくこの現象は誰も見たことが無く、意味がわからず、ただ人族が勇者だと騒いでいるから勇者が現れたと言っているのでしょう。
「これですか?」
私は異界に召喚されて喜んでいるもの、不安を顕にしているもの、正義感を振りまいて皆を統制しようとしているものが映された映像を見ます……これが勇者でしょうね。
「異界から我々魔族を討ち滅ぼす為に召喚された者たちです」
「異界?召喚?子供にしか見えないが?」
ヴァンレイド様が困惑の色を顕にしています。確かに今は脅威ではないでしょうが、テンプレとしてはこれからチート級に強くなっていくのでしょう。
「今はただの子供でしょうが、中二病が抜けきらない者たちにとって、
私の言葉に笑いが起こります。こんな子供に何が出来るというのかという笑いでしょう。
「あの者たちを見て何も思いませんか?ほとんどの者たちが魔王さまと同じ黒髪です。一つの島国で、千年以上も小競り合いを繰り返してきた戦闘民族の末裔を侮らないことです」
とは脅しているものの私が生きていた時代よりもゲーム脳が進んでいるでしょうから、彼らは驚異的に成長していくことでしょう。
「第三将軍淫魔のリリーベル殿。そう言われてもなぁ」
「あんなひょろちい奴らが強いだなんて笑わせてくれる」
「真に同意」
「第三に上ったからいい気になってんじゃねぇよ」
次々に上がってくる私の言葉の否定。魔族は個の主張が強すぎてまとまらないことは百も承知です。
ここはやはり魔王様が居てくださらないと、話になりません。どうにかして魔王様に我々をまとめていただかないと……。
流れ続ける映像の中で一人の人物に目をつけました。
良いでしょう。世界が私に喧嘩を売ってきたというのであれば、買って差し上げます。私は笑みを深め私をあざ笑っている者たちに視線を向けます。あなた達には大いに働いてもらいましょう。
そして……
愛する魔王様にはさらなる、“愛”と“憎”を捧げましょう。
______________
「文字数いきましたわよね!これで最低ラインクリアですわよね」
「リリーベル。凄く中途で終わったぞ」
「あら?アベル。だって続きが気になる終わり方にするようにって」
「そんなことは何処にも書いていないだろ?」
「良いのよ。続きはコンテストに受かれば書くそうよ」
「いや、無理だろう」
「……人気が出れば書くそうよ」
「俺は知っているぞ。この作者の作品は地を這っていると」
( ゚∀゚)・∵. グハッ!!
「アベル。クリティカルヒットが入ったわね。回復には時間がかかりそうだわ。これは当分の間は書けなさそうね」
___________
ここまでお付き合いしていただきましてありがとうございました。
後半はカクヨムオンリーでお届けしました。題名的には本編は6話までです。
馬鹿な作者では『賢い』という単語に翻弄されました。ということで、締切ギリギリで最低文字数ギリギリで突っ込んでみた作品は如何だったでしょうか?
少しでも面白かったと評価をいただければ、最後にある☆☆☆を押していただいて評価をしていただければ嬉しく思います。
ご意見ご感想等がありましたら、下の感想欄から入力してください。よろしくお願いします。
ここまで読んでいただきましてありがとうございました。
死に際に思い出した前世は私を愛憎の赤き炎に突き落としました〜魔王様の我々への裏切りは阻止します〜 白雲八鈴 @hakumo-hatirin
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