誰も教えてくれない

人生は長い。16歳なら16歳なりの、40歳なら40歳なりの「長さ」を感じる。長く生きれば「生きている意味」の答えが分かるのか? 残念ながら分からない。自慢げに教えてくれる人がいるとすれば、それはその人なりの答えであり、自分の答えではない。

「何故生きているか」その答えは蜃気楼の様だ。追ってもどんどん逃げていく。決して追いつくことはない。だから答えはきっと「明日以降」にある……と信じる。明日分からなければ明後日、明後日分からなければその次の日……

しかし長く生きれば自然と増えるものがある。「経験」だ。自分で望まなくても経験は増える。親に言われて勉強した中学~大学受験、阪神大震災も大阪北部地震も経験した。大学卒業時、就職先が決まらなくて一浪して大学院へ行った。仕事で転職も異動も経験した。嫌いな上司に耐えながらそいつがいなくなるまで10年ぐらい耐えた。

振り返れば「経験」の中には良いことも悪いこともあった。でも、印象が強いのは悪いこと。どうやら人間の脳は生き残るため、危機を回避するために悪い経験の記憶の方が強く残るらしい。

今は一介のサラリーマンだが、仕事自体は決して楽しいものではない。会社と言う組織に属していると、嫌なことや納得いかないことが常に起こる。それでも仕事は辞めないし辞めれない。辞めたら給料がなくなって更に苦労することが目に見えているからだ。

多分「経験」を重ねることで、嫌なことや辛いことへの対応方法ばかり上手くなっていくんだと思う。しかしそれでいい。それが上手くなれば余裕が生まれる。その余裕で「良いことが起こる(かもしれない)」何かきっかけを掴めばいい。自分の場合はそれが文章を書くことだったり、音楽を聴くことだったり。これがあればメインストリームたる仕事人生の辛さを誤魔化せて、少しだけリセット・リフレッシュした気になれるから。

作者の遺産様が「若い」と言うつもりはない。16年生きていた経験の重さや意味はその人だけのものだ。だがこうやって「文章を書くこと」を見つけられたのならば、書き続けて更に16年後の32歳のあなたに、その時の心境を語ってほしい。そして更に16年後、また16年後……その時に「答え」と言わずとも何か糸口は掴めているだろうか。楽しみだ。