はなみずき 🌼

上月くるを

はなみずき 🌼





 つい先日まで金色を輝かせていたマンサクは、やわらかな新緑の葉っぱになった。

 入れ替わるようにして、うすくれなゐ&純白の花を咲かせ始めたのはハナミズキ。


 玄関前の庭石にちょこなんと座ったフミコさんが、あどけなく手を振ってくれる。

 デイサービスの迎えの車を待っているのだろう、少し認知症気味らしいけど……。


 運転席のヨウコさんも手を振り返したその瞬間、朝日がチカッと目にとびこんだ。

 イタッ!!……いや、痛いのは目ではなく、善き隣人の横を黙って通過する自分。


 数年前に夫を亡くしたフミコさんは太った猫を猫かわいがりにかわいがっていた。

 どこへ行くにも連れて歩き、だっこしたりおんぶしたり、人間の赤ん坊みたいに。


 広い敷地内には長男一家の大きな二階家があり、フミコさんは小さな平屋住まい。

 だれもいなくなる昼間はさびしかったんだよね……けど、あの猫、どうしたの?




      🏡




 小説の執筆は言葉あそびではない、人のこころを丹念に掘り起こす地道な作業だ。

 そんな根本すら分かってもらっていなかった事実の打ち身がいまもズキズキする。


 尊敬していた(ときに不審が掠めても、そう努めていた)人物のざらついた本音。

 なにより俗を疎んだはずの自分も肩書や社会的地位に幻惑されていたんだね。💦


                  

              🗨️💬 🗨️💬


 ボンサイノカクボンサクヨリ、ボウダイナデータノ集積カラ、イイトコドリシタ

人工知能ノ作品ノホウガ、カクダンニ、スグレテイルニ、キマッテイルヨネ、フフ。

(著作権モンダイハドウナル? トイウハナシモアルガ、時代ノ要請ダカラネ🤠)

                  

              🗨️💬 🗨️💬



 ほかに寄る辺のないヨウコさんにとっての「これだけは、だれにも……」が小説の執筆であることを理解してくれていると信じて疑わなかった、素直という名の愚直。


 情けない情けない、清廉潔白なハナミズキの花に顔向けできない、ミジメナ自分。

 やわらかなからだ&こころのそこいらじゅうから、じゅくじゅく膿が湧いて来る。


 いやいや、どう言われようと、わたしはこれからも自分のこころを掘りさげるよ。

 一途なポジティブシンキングを親指でぎゅぎゅっと粘土のような心身に押しこむ。


 

 

       🌹




 カフェの花壇の薔薇の芽は日ごとに厚みを増し、かたくて丸い蕾を準備中らしい。

 いつもの席で開いた小説の作者は若い女性で、全編に清らかな気が通底している。


 ネット小説を書いている自分も、どこにもありそうな日常に導かれているうちに、ひょっと人情の鋭敏な部分に触れてチリッとあつくなる……そんな世界を紡ぎたい。


 なのに、思いきり的外れな横槍を喰らったら、沈むでしょうが、モチベーション。

 そんなことすらも分からないの? たしか特注じゃなかったっけ? そのアタマ。


 同じ文が付いても文化と文明は似て非なるもの、文明の浮薄に牽引される時代様相にひっそり抵抗する若い作家……その存在がいまのヨウコさんの支えになっている。


 浮かれ人たちよ、どうか踏みこまないで、他者のこころの中庭に荒々しい土足で。

 文明人は文明人の顔でいてね、厚かましく文化人なんか装わないでよ。( *´艸`)

 




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