チャットG☆T 🏄‍♂️

上月くるを

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 ゴミ出しの時間に合わせ、七時前に出たつもりだったが、もう十人も並んでいる。

 山脈颪の寒風に吹きさらされ、マラソンのように足踏みしている人も何人か……。


 いつも思うのだけれど、これって、なんとかならないのだろうか。((((oノ´3`)ノ

「当院では緊急患者さまのために予約制を採用していません」って、それは分かる。


 分かりはするが、仮にも(笑)こちらは患者だよ、具合がわるいから来るんだよ。

 なのに、かろうじて屋根はあっても四方八方の吹きさらしに三十分も並ぶんだよ。


 それをしておかないと混み合う待合室で三時間も四時間も待たされることになり、腰痛や頭痛やその他もろもろの症状におそわれて、事後、何日も苦しむことになる。


 お世話になっていて申し訳ないが、先生や看護師さん、ご自分で並んでみたら?

 スポーツブルゾンのフードをすっぽりかぶって寒さにふるえながら思ってしまう。




      🌨️




 ふだんは元気だし、人前では弱みを見せないので「まだ通ってるの、クリニック。少なくとも気丈なあなたには必要ないと思うよ、カモにされているんじゃないの?」


 そんなふうに言われることがあっても「かもね(笑)でも、もう通院しなくていいですと言ってもらえないから仕方ないんだよね~」軽薄には軽薄のキャッチボール。


 満面の笑みで深く軽蔑できる(笑)人のわるいヨウコさん、そういえばと考える。

 先日のテレビで女性教授が説いていたマイクロアグレッシブって、こういうこと?


 ごく簡潔に言えば、マジョリティによるマイノリティへの「悪意のない攻撃性」。

 言った側はすぐ忘れるが、言われたほうの心にはいつまでも暗い翳が刻印される。


 だが、そういうヨウコさんだって、ふとした偶然でマイノリティからマジョリティに変わったとき同様なことを仕出かしたかも……パニック障害、その報いかも。💦




      🥤




 あまりに寒いと頭だけでも暖かい場所を求めるのか、思考は昨日のカフェに跳ぶ。

 奥まった席で嬌声をあげていたのは、高価そうな服装のシニア女性ふたりだった。



      🔹🔹     🔹🔹     🔹🔹     🔹🔹



  いま話題のチャット G☆T ね、あれをやってみたら、ゲームより面白かったよ。

  むかしからあなたチャレンジ好きだものね、で、どういうところがそんなに?


  AIに小説を書いてもらうの、文章なんて書いたことないわたしでも超簡単!!

  へえ、無料で自分専用の作品を書いてくれるなんてステキ、で、どうやるの?


 「年下、イケメン、不倫」などの好きなワードを、英語で入力すればいいだけよ。

  ふ~ん、なんとも濃厚な恋愛小説ができそうだね、わたしも試してみようかな。



      🔹🔹     🔹🔹     🔹🔹     🔹🔹



 ああ、もうやめて、そういう話は人のいないところでやってよ、耳がくさるから。

 それに作者の魂魄が籠もらないマガイモノ、まちがっても小説などと呼ばないで。


 暇を持て余してのAIごっこも結構だけど、毎日こつこつ地道な執筆をつづけている人たちの誠実を冒涜している事実に気づきもしない鈍感力、すごいよね~。(一一")




      🥼




 ようやく呼ばれた診察室の壁には患者の手になる絵や書がずらりと飾られている。

 医師が言うようにクリエイティブな活動が治療の援けになることはたしかだろう。


 ヨウコさんのネット小説執筆もそのひとつだが、それだけに文学に詳しくない医師に AI 利用を勧められることを警戒する。瞬間、七年の信頼は強制終了するだろう。


 一見、悪意のなさそうな(切れ味のわるい)ナイフほど、怖くて痛いものはない。

 研いだ針でスッと心の臓を……『必殺仕事人』の熟練技のほうがずっとやさしい。




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