第42話 領地運営2

 リブラ・スプラウト領の治安は前よりはマシになったが他の領に比べて悪いと言える。

 領民が貧しいというのもあるし、行商人がこの領を避けるようになったのも原因の一つと言えた。

 エルフ達に聞き込みをした所、この土地は土壌が痩せている土地に田畑を作っていると進言を受けた。

 土壌が肥えた土地を開墾すれば良いのではないか?と言えば、魔の森には危険な魔物がいるから難しいと言われた。

 「伯爵領にいる騎士は全員で何名いる?」

 ヤーマンに尋ねると

 「50名になります。他領へ逃げた者もおりますので…」

苦々し気に答えてくれた。

 「そこからか…ともなれば魔の森の開墾は後回しにした方が良いな。この領地には痩せた農地、魔の森、漁港の三つだな。先ずは痩せた農地から改革するか…」

 私はノートパソコンを起動し、情報収集を始めた。

 先ずは農業からだ。

 瘦せた土地=微生物が居ない土地だ。最初は有機質が無い土地かと思ったが、調べればそれ以前の問題だと分かったので堆肥たいひを作ることにした。

 とは言っても一から作るとなると時間と手間が掛かる。この冬を超えるだけの農産物が一から作るとなると間に合わないので科学の力で押し切ろうと思う。

 トーマス菌を大量購入して使用することだ。他にも痩せた大地に強い種や便利な農耕器具も一式地球でまとめ買いしたのは言うまでもない。

 私は王都に転移し、スラム街で領地に来てくれる人間を応募した。自衛団と建築関係の人手を募集したら200名ほど移住してくれるとのこと。

 旨味のない領地なので自衛団には金貨20枚、建築は金貨19枚を月々支給し、家族連れであれば新しく建築された住居は半年間家賃なしと応募を出したら集まった。

 集まった者達を伯爵領に転移させてテントにて生活して貰っている。

 「ヤーマン、騎士達を広場に集めてくれ。私は着替えてくる。」

 傍に居たヤーマンに指示を出し、私は自室で着替えをする。

 此処に到着した際にヤーマンやメイド達が伯爵に相応しいドレスを着るようにと五月蠅かったので秋月しゅうげつで販売している一番動きやすい服を着ているのだ。

 野良仕事にドレスは向かないのでジャージに着替えて広場に向かった。

 「さて諸君、今から土木工事を始める!」

 一人ひとりにシャベルを持たせた私の宣言に嫌そうな表情かおをする騎士達。そしてやる気のある建築志望の者達。自衛団の者達は魔の森にてスライムの捕獲を命じた。

 「何だ、不服そうだな。」

 にっこり笑みを浮かべれば皆押し黙った。

 「魔の森の開墾をするにしても騎士の人数が足りないからな。まぁ、お前達に現状仕事を与える事として住宅を造ろうと思うんだ。この街を見て回ったが、倒壊寸前の家が多々散見された。私が領主になったからには衣食住を徹底したいと思う。」

 スラム街で作った9階建てのプレハブを建てるのだ。

 拝み倒してドワーフのノブを現場監督に来てもらっている。

 「嫌なら騎士を返上してくれて構わん。」

 私が宣言すると騎士達は私の意思に従ってくれるようだった。

 こうしてリブラ・スプラウト領のプレハブ建築が始まった。夏本番になるまでには建築を終わらせたいものだ。



 


 プレハブ建築と並行して私は痩せた大地にトーマス菌を土に馴染ませる作業をした。

 農民達も最初は私の言う事を半信半疑だったが、領主命令と言えば素直に従ってくれた。

 芋類、トウモロコシ、枝豆、オクラを中心に植え、他には田んぼを作って日本米を育てることにした。他にも収穫の早い野菜の種を蒔いた。

 我が領地では農地は貸し与えられているので税率が7割と高い。これだと購買意欲以前の問題だ。

 作物は全て伯爵領で買い取る旨を通達し、自分達の分は支給された給与より買戻しするように説明した。

 農民が得られる月収は月に金貨17枚になる。夫婦共働きなら金貨34枚だ。そこから所得税・住民税・福利厚生(健康保険や雇用保険料など)に家賃を差し引いて金貨28枚は確保出来る。

 農地改革が落ち着いたら学校にて子供も大人も読み書き算術は義務教育とする。毎日2時間勉強して貰う事になる。

 成績優秀者になると王都の日本国秋月あきつき専門学校へ特待生として送り出す算段だ。

 まぁ、もっと領地が豊になれば日本国秋月あきつき専門学校の姉妹校を作ろうとも思っているが時期早々だ。

 「ヒヨリ様、ちょっと良いかい?」

 農民と一緒に土を耕していた私にノブが声を掛けて来た。

 「何か問題でもあったか?」

 「う~ん、騎士共がなぁ……やる気がないようで足を引っ張ってるんじゃ。」

 仕事しないと苦情を言うノブに私の米神に青筋が立つ。

 「ふ~ん、もし騎士を除外して作業するとすれば行程にどの程度遅れが出る?」

 「あいつ等いてもいなくても一緒だから変わらん。」

 給料泥棒の発言に私は鍬を片手に

 「そうか、そうか…ふ~ん、役に立たない奴等はクビで良いかな。ノブも悪いね、あんな奴等の世話をさせちゃって。工事が終わったら美味しい酒と御馳走を用意してやるから皆頑張ってくれと伝えておいてくれ。私は馬鹿共にクビを言い渡しに行ってくるわ。」

ノブを励まし使えない騎士達がいる現場まで足を運んだ。

 私が現場に来ても気付かないやる気のない騎士達に

 「はーい注目♡」

メガホン片手に呼びかけをした。

 一斉に私の方に向く騎士達に

 「諸君達は仕事を疎かにしていると報告を頂きました。ですので本日を以て騎士団は解散!皆さんはクビです♡」

ニコニコと笑顔を浮かべてお仕事終了のお知らせをした。

 「な?何でですか!?」

 一人の騎士が詰め寄って来たので

 「え?だって仕事を碌にしないごく潰しなんて要らないんだよ。お給金だって安くないんだよ。君達がいなくても自衛団をそのまま騎士団に組み込むから心配しないでくれ。安心してリブラ・スプラウト領から出て行ってくれて構わないよ。ああ、私も鬼じゃないからね。働いてない奴に給料を払うのも業腹だけど最後の給料ぐらいはちゃんと払うさ。」

だからね、と笑顔で

 「与えられた仕事もこなせない奴は用済みなんだ。」

リブラ・スプラウト領からの追放を伝えた。

 彼等は置かれた状況にやっと気付いたようで何度も慈悲を乞うてきたが私は聞く耳を持たずに彼等とその家族を領地から追放した。

 いずれこの領地は大きく発展させる予定だからね。怠け者は要らないんだよ。

 こうして無能を排除していくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

土下座から始まる異世界放浪 @konohana2023

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ