リブラ・スプラウト領

第41話 領地運営

 車を飛ばして1ヶ月、私はリブラ・スプラウト領に来ていた。正直、旨味はない領地だ。特に特産物があるというわけでもないし、税収も不作続きのため見込めない。爵位と領地を受ける代わりに内々で50年間の税収免除を約束を取り付けたのはいうまでもない。この条件が飲めないなら爵位は不要と言ったから渋々了承してくれたのだ。

 問題になったのは私の外見年齢である。そう、私は未成年に見られるぐらいに若く見える。

 「今日からリブラ・スプラウト領を治めるヒヨリ・大和やまと日本にほんだ。」

 使用人全員を集めてぐるりと見渡す。

 彼等が私を見る視線には不安・好機・侮蔑と様々であった。

 この容姿を活用してふるいに掛けよう。不正を働く者は全財産没収の上に領地追放してやる。

 私は執事長に直近30年間の帳簿を持ってこさせ領地運営がどうなっているのか確認をした。それと同時に地球で購入していた小型カメラとボイスレコーダーを屋敷に設置していく。

 こうして3ヶ月ほど馬鹿を放置しつつ領地運営計画をコツコツと進めていくのだった。

 「ヒヨリ様、どうして彼等に何も言わないのです?」

 怠慢な奴等に我慢ならないとばかりに苦言を呈する執事長に

 「ん~もうちょっと待っててくれないかな。そしたら面白いことが起きるよ。」

待てと命令を下す。

 執事長は不服そうな表情かおをするも私の命令に従ってくれた。彼は領主が不在の間も何とか領地を回していただけあって有能だ。

 彼と一緒に不正をしていた商人を選別し、今後の領地運営について相談した。

 この領地に来てから4ヶ月が経過した頃、ついに全部の証拠が集まったので私は使用人全員を食堂に集めた。

 「やあ、皆よく集まってくれた。今から名前を読み上げる者達は前に出て。ノイマン、シャイラ、フレンツ………」

 ざっと半分の使用人が名前を呼ばれた。

 名前を呼ばれた使用人は褒美でもあるのかと嬉しそうな表情かおをしているが、残念だな。

 「今、名前を呼んだ人間は全員クビの上に賠償金を払って領地追放だからね。」

 ニコニコと微笑んで宣言した私の言葉が通じなかったのか彼等は固まった。

 反応が無いので

 「ん?理解出来なかったかい?名前を呼んだ人間はクビだよ。その上で横領した分の賠償金と慰謝料を支払って領地追放だからね。」

慰謝料を追加で請求する事にした。

 私の言葉に我に返った彼等は

 「領主様あんまりです!私が何をしたって言うんですか!?」

 「そうですよ!こんなにも領主様に尽くしているというのにあんまりです!」

 「横領って濡れ衣です!」

キーキーと文句を言って来た。

 あんまりにも鬱陶しいので私は

 「執事長、準備をお願い。」

プロジェクターの準備をさせた。

 執事長は慣れた手つきでプロジェクターの準備をし、準備が整えば映像を流してくれた。

 流れた映像には横領している証拠や仕事をサボったり同僚に押し付けている場面が映し出される。

 ダイジェスト版にしたが結構良い感じに撮れている。

 「こ、これは…その、何かの間違いです!」

 まだ言い訳を続けようとする彼等に

 「言い訳は結構。商人と組んで横領している証拠もバッチリと取ってあるからね。」

証文をペラペラと見せてやればガックリと項垂れた。

 「君達の全財産を没収しても賠償金の額には到底届かないんだよ。その上で私に慰謝料を支払いしなければならない。ヤーマン、彼等にそれぞれの支払い金額を明記した借金返済書類を見せてあげて。」

 ヤーマンは彼等一人ひとりに使い込んだ詳細の金額と慰謝料を記載した合計金額を記載した借金返済書類を渡した。

 口々にこんなのあんまりだ!と叫ぶ彼等を無視して私は

 「今まで好き勝手してくれたんだ。そろそろ返してくれても良いだろう。それとも死刑の方が良かったか?ヤーマン、確か平民が貴族の財産を横領した場合は死罪もありえたよな?」

 「悪質な場合は死罪もありえます。」

 「打ち首にされるか、借金奴隷になるかどっちが良い?」

彼等にサインをするように促せば、私の本気度を感じ取ったようでサインをしてくれた。

 「それにしても使用人の半分も脱落するとはなぁ。拘束バインド

 技術アーツ拘束バインドを発動して、罪人達の逃亡を防いだ。

 「ヤーマン、奴隷商を呼んでくれ。あとコイツ等の自宅から全財産を押収するように手配宜しく頼む。」

 ヤーマンに指示を出して私は執務室に向かった。

 大捕り物が終わり、人手不足になった伯爵家に新しい人材を紹介して欲しいとナヴァール公爵に手紙を書いた。

 「ふむ、お金が全然足りないし、作物も育ってないから税収も期待出来ない。最悪な土地を渡しやがって…」

 王と公爵に文句を言いたいのを飲み込んで、早速この地に住まわせていたエルフを呼ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

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