妖人往時譚

　山の奥に住む丁怪という男がいた。その男がある日『万状古格闘乱』という古来より続く、多種多様な種族による大規模な力を競う大会があることを耳にする。
　その中で彼が注目をしたのはその大会の優勝商品である血を吸う刀『赫洩』と魔を閉じ込める『涅籠』という鞘のことであった。それらは彼の遠い先祖が譲り受けたものであり、それは長らく一家の家宝だった。
　しかしある時から忽然と姿を消している。誰が探せども姿は見つからず、ついには父までもが死に絶えてしまった。
　そんな時分のことだった。普段は山に篭りっきりで、争いも好まない彼だったが、今回ばかりは無視すれば先祖に顔向けできないと思い出場を決意する。
　その大会は代々とある無人島で行われている。その島の中央にすり鉢のような形をしたスタジアムがある。出場人数は…続きを読む