第1話

 魔王城から少し離れた場所に遺体を埋め、簡易的な墓を作った。

 父さんとの別れを済ませるとフードを被り町から出発した。父や町の皆の仇を取るために。

 とはいえ、誰がこれをやったか分からない状態だ。      とりあえず、聞き込みをしなければいけなかった。

 「ここからだと近いのはヒース村か……人間の村なんて初めて行くな。」

 私は確認するように呟くとヒース村の方角へと歩き始めた。

 


 

  道中の森にて休憩していた時だった。こちらへ向かってくる足音がする。

 急いで茂みの中へと潜り、隠れた。

 しばらくして人間の少女が巨大な獣とともに現れる。見たところ少女の方は走り疲れたのか、ふらふらしていた。

 「もう、来ないで。誰か、誰かあぁ-!」

 その場に倒れ、彼女の顔は恐怖と絶望でぐちゃぐちゃになっていた。

       「火炎《ファイア》」

 私は飛び出し、獣めがけて魔法を放った。その獣はしばらくの間のたうちまわり、倒れる。

 少女の方を見ると呆気にとられていた様だった。

 「えーっと、君大丈夫?おーい、聞こえてる?」

 彼女の顔の前で手を振っていると、いきなり手を掴まれた。そして、目を輝かせながら少女は言う。

 「ありがとうございます!!フードのお方。ぜひ、何かお礼をさせて下さい!!」

 「……あ、ああ。じゃあ、ヒース村まで案内をお願いできる?」

 「もちろんです!!」

 あまりの勢いについつい頼みごとしてしまったが、果たして良かったんだろうか。

 どこから来たかわからない彼女を元々居た場所に返すのが先なんじゃないか。

 そんな考えはあったが、まあ良いか。

 

 そうして私たちはヒース村へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王の娘、人間の世界へ! やきおに @frt3007

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ