第25話 エレアの諦め
世界を旅すると言ったクリスは爆速の5分で世界を回り切ってきっちりまた戻ってきた!!
『クリスよ…。さ、流石に5分は早すぎると思うんじゃ!ついさっき別れの挨拶をしたじゃろ?』
「ああ…した。一度エレアを諦め世界を5分で回り切っている間に考えた」
いや待って?それ本当に5分しか考えてないからね?
「やはり僕はエレア無しでは生きていけない思いたいヤツなんだ!!
エレアのいない世界は寂しい!
僕はやはり君のことが大好きだ!!
どうかエレア!僕と結婚して欲しい!!」
といきなりひざまづき、なんとクリスはいつの間にか綺麗なクリスの瞳の色の青の宝石のついた指輪を私に向けた。
やっぱり爆速でプロポーズしてきた!
「………」
私はこの綺麗な顔の勇者のただの幼馴染で正直言って恋愛感情がない…。
しかしこれはもうクリスから逃れるのは一生無理かもしれないと悟った。
断っても断っても諦めずに付き纏ってくるし、私に好きな人ができてもその人は多分クリスに爆速で殺されるだろう。
つまり全部無駄なのだ。
「はあああ……」
私は物凄いため息をついた。
散々私はクリスを好きにならないと言ったのに。
クリスはもはや泣きそうな目をしてこちらを見ている。
いや実際に泣いていた。このイケメンは私がいないと生きていけないと泣いてプロポーズするのだ。
「…わかった…。もう諦めるよ。クリス、私クリスと結婚するよ」
と言うとクリスは驚いて口を開けた。
初めてクリスの時間が止まった様だった。
オシリア様はガクガクと私を揺すり、
『エレア!妥協してはなりませんよ!?クリスのこと何とも思っていないのでしょう?』
と言う。
私は
「はい、オシリア様。私はクリスのことを何とも思っていません!
ですが、私が結婚する事で安定するならもういいかと思います。
クリス顔だけはいいので妥協しようと思います」
と私はもはや性格を無視してとうとう顔だけで判断して受け入れることにした。
こんな理由を堂々と言ってもクリスはボロボロと泣き、
「うう!ありがとう!ありがとうエレア!僕のエレア!!やっと受け入れてくれた!!」
と嬉し泣きをしていた。
レギオン王は
『………こんな結末になろうとはの…』
ともはや白目になっている。
結局私は指に婚約指輪をはめられてクリスと村に帰ることになった。
クリスはにこにこで私をお姫様抱っこして転移して村に着いた。
すると村の人が気付いた。
「クリス!エレア!帰ってきたのか!?」
村の教会の牧師のセイロンさんだ。
「セイロン牧師様!エレアと結婚します!!」
と元気よくクリスが言ったのでポカンとするセイロン牧師は
「え?ああ…そうなのかい?ええ?普通両親に先に言うんじゃ…」
と言うとクリスは
「それもそうですね!じゃっ」
とその場から転移して実家の私の家に来て、父さんと母さんが夕食を食べようとしているテーブルにドンっと転移して驚いた父さんが
「ぎゃあああ!!」
と叫びスープを足にこぼして
「あっっつわっ!」
と慌てる。
母さんは逆に冷静で目を細め
「あらおかえりエレア、クリスくん」
クリスは母さんに向かい、
「只今戻りました!僕はエレアと結婚します!!」
と言い放った。
母さんは目を細め、
「まあ、エレアおめでとう!とうとう観念したのね?」
と言ってきた。
私は肩をすくめてうなづいた。
父さんは
「そ、そうか…。村長に連絡しておくよ!」
と焦り、机に足をぶつけながら報告に行き、次の日から村人総出で飾り付けやウェディングボード会場のセッティング、国王への報告と大変慌ただしい日、私はドレスの採寸を図られたりした。
本当は国を挙げて勇者のクリスと王都まで行って盛大な式にするはずだが、クリスはあっさりと国王の申し出を断っていた。
「僕は地味な結婚式をしたい」
と言うので国王様も折れる他なかった。結局国王様達の方から馬車で出向いてこの村にやってきている。
大変申し訳ないです。
*
結婚式前日の夜にクリスが真夜中に私の部屋に転移してきた。明日早いのに結構な迷惑だ。
「ごめんエレア。夜中に。でも星が綺麗だから屋根に登ろう」
と言い出してあっという間に屋根に瞬間移動させられた。
寒ううう!!
と思っているとクリスが上着を脱ぎかけてくれた。
そしてもじもじして肩に手を置き、
「エレア、本当に綺麗だよね」
「…ああ、うん。そうね。星田舎だしよく見えるね」
と言うとちょっとプクっとして
「星もだけどエレアもだよ!」
と言う。人の睡眠を妨げといて星見にきたんちゃうんか!?
と思ったがもはや私は突っ込むのも疲れていた。
「エレア。
望まぬ形で結婚を受け入れてくれたこと感謝するよ。ありがとう!
僕は一生かけてエレアを守るし心をいつか僕の方に向けて見せる」
普通は結婚前にそう言う感じなんだけど結婚後なのね…。とりあえず逃がさないと言うのはわかった。
「エレア、本当に愛しているよ!」
クリスは肩に少し力を入れてグングンと私に顔を近づけ、
ああ、もうだめだ。キスされるわ…。
と思った時にはもうキスをされていた。
*
次の日の結婚式は寝不足だったが皆が用意してくれたので私も笑顔になりきり挨拶したり両親に泣かれたりした。国王様からもお祝いの言葉を頂いた。
「ええ、勇者クリスで初めて会ったのは夜中に寝る間際で…爆速で魔王の首を取ってくれ前代未聞のとんでもない奴が来たなと思いました…」
とスピーチしてきた。確かにあの時は本当に何考えてるのこいつとか私も思ったもん。
「しかし各地の魔王も分身のクリスが監視しており、この先魔族達も人間と有効な関係を築くと協定を結び、平和が訪れたのもクリスのおかげです」
実際はただのクリスによる報復がおそろしいので魔族達も黙っているだけだった。
「クリス、エレア…。これから先も末長く幸せになって良い家庭を築くのだぞ?」
とスピーチは終わり拍手が送られた。クリスは国王のスピーチをガン無視してずっと隣の私をガン見していたけど。
それから牧師さん達の前で恒例の誓いを述べ指輪交換をした。違いのキスの時は参列者の娘達の恨みのこもった視線が集まるのを感じて申し訳なくなった。
鐘が鳴り、ブーケトスの時間に私は持っていた花を投げようとした。
村の娘や国から来た娘達がギラギラと私の花を狙って待ち構えていた。
やだ怖い!
とりあえずさっさと花を投げると飢えた獣のように花を奪い合う娘達がいた。
その後は宴会となった。祭りみたいに屋台も出店して王都から来た楽団や踊り子達もいた。あーあ、私もとうとう結婚してしまったか。まあ一応顔はイケメンだしもう諦めたから後悔しても仕方ない。クリスも私を裏切り浮気をすることは絶対に無いだろうけど。
*
その夜、オシリア様が初夜前にやってきて私に惚れ薬を渡した。
「どうしても耐えられなくなったら飲むのですよ」
と言われ私は
「ありがとうございます。オシリア様!」
「エレアの幸せを願っていますよ!負けないで!」
「はい!」
と受け取り私は早速惚れ薬を飲み無事に初夜を終えた。
*
それから数年経ち、子供がお腹にできた。
また国王様達からお祝いの品が届いたりした。
クリスはいつもとろけたように私のお腹に耳をくっつけて
「ふふふ、僕とエレアの子供…。男のかな?女の子かな?早く生まれてきてね?
パパが物凄く可愛がってあげるよ!」
にお腹の子がビクッとした気がする。
子供もクリスの溺愛に怯えて出てきたく無いって思った?
ともあれこれからもクリスからは逃れられないだろうから私の子よ…。お母さんと一緒に強く生きようね?
と私はお腹をさするのだった。
爆速勇者が幼馴染の私を束縛してきます! 黒月白華 @shirofukuneko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます