第24話 さようならクリス

『な、何を言っているのですクリス!?そんな事できるわけがないでしょう?


 大体この世界の神は私ですよ!?』

 オシリア様はヒクヒクしながら言うとクリスは


「願い一つ叶えられない女神がいるか!それにお前は役立たずだから神様の地位を寄越してお前は引退して田舎へ帰れ!」

 とクリスはだいぶ上から目線だ。


 オシリア様は涙目で


『ひ、酷い!!そんな!私をこの世界から追い出すって言うの!?』


『そうじゃよクリス!なんて事を言うんじゃ!確かにお前は凄い力を持っておる!だが、女神様に対してちとばかり失礼じゃよ?


 クリスをこの世界に転生させたのはオシリア様なのじゃ!』


 と言うとクリスは


「別に頼んでいないし、そっちが勝手にやったんだろう?大体生まれ変わったのに好きな子と結ばれないなんてあまりにも僕が可哀想だろ!!」


 確かにそうだが、私も巻き込まれ転生者で人の気持ち無視して迫るのはどうなのか?


「いいか。僕は前世でも恋人はおろか恋愛すらまともにした事はない。周りから恋愛相談される側であったけどね。


 それどころか作品が売れてからは嫉妬に狂ったアンチが編集部に脅迫状を送ってきたりとかあった。


 外に出たら誰かに刺されるんではと気が気じゃなかった。


 平穏に好きな子と生涯を過ごせたらどんなに幸せだろうか?」


 と言うクリスに前世の売れっ子作家も大変だったのねと少し同情した。


「こっちに転生して魔王の管理や悪いダーク勇者も封印した。後は平穏に結婚して幸せに暮らすのを望んで何が悪いんだ!普通のことだろ!?」


『ぐ…だ、だがな?この世界の女神様とお前を交換とかそんな無茶苦茶なことはできんよ。いくらなんでも』


 とレギオン王もなんとかクリスを諌めようとする。

 話は纏まらずだ。それはそうだ。神になるなんて元々が滅茶苦茶な話だしクリスが神なんかになったら私は間違いなくクリスと無理矢理くっ付けられる。


「…わかった。妥協する。

 エレアは俺と結婚しなくてもいい。その代わり…俺の子を産んでくれないか?」


 と言ったので私は


「なんでよ!」

 と突っ込む。


「産まれた子は俺が引き取り育てるし」


「いや、そもそもぶっ飛んでるし展開が爆速すぎるから!!」


 というとクリスは


「どうしてもダメかなエレア」


「ダメです。それだけは無理」


 というとクリスは考えこんだ。

 そして


「はあ…。わかった。エレア…。今まで迷惑かけてごめん。君のことはもうキッパリ諦めるよ」


 と言ったので私もオシリア様もレギオン王も


『えええ?クリスそれは本当なの?』


『やっぱり嘘とか言わないかい?』


「本当に私を諦めるの??」


 と口々に言うとクリスは


「うるさいな。俺はエレアにどうしたって好きになってもらえないし諦めるしかもうないだろ?」

 と言うクリス!


 ああ!やっと!?やっと私クリスから解放されるのね!?

 心から喜びが込み上げてきた!!


「それじゃあ、俺は旅に出るよ。ジジイも女神も今後俺の事はほっといてくれ。干渉するな!これが俺の願いだ。


 エレアも幸せに」

 とクリスは私に握手を求めた。


「わかったわ!クリス!元気でね!!体に気をつけてね!」


 と握手した。

 手を放すとクリスは眉を下げ寂しそうに笑い、


「じゃあね…。ジジイも女神も元気でな」


『く、クリス…。どこにいてもわしはお前を見守っておる』


「いやそこは干渉するなってさっき言ったろ?」


『…わかりました…。クリス貴方はきっとどこでも元気でいてくれると信じています。旅の加護を貴方に』

 とオシリア様はクリスが元気でいられるように祈ってくれた。


 クリスはため息をついていた。加護いらないの!?


「エレア…最後にハグしていい?」

 とクリスは言う。


 ハグ?

 うーん。それくらいなら仕方ないか。ここでしないのは流石に人としてないかな。

 と思ったので私は


「う、うん…いいよ」


 と言うなり爆速で抱きしめられた。

 ちょっと背骨が痛いくらいに。


 それから5分くらい経った。

 いや、なっが!!


「ちょっとクリス…。普通こういうのは直ぐに離れる感じじゃない!?めちゃくちゃ長いんだけど!?」

 と言うとクリスは


「だって…しばらく旅に出るからね…。エレアの感触を最後に覚えていたかったから」

 と言い、ようやく離れて


「それじゃ今度こそさよならエレア。おいジジイ、クソ女神!エレアを村まで転送してやれよ?」


『わかっとるよ』


『く、クソ女神…』

 オシリア様はちょっと怒ったが


『ではクリスさようなら元気…』


 元気でとオシリア様が言うより早くクリスはその場から光に包まれ消えた。

 どこかに転移したのだろう。


「はあ、やっと終わったのね」


『そうじゃのう』


『エレアもお疲れ様。色々と迷惑かけてごめんね。聖女なんてやらせて』


「いえ、ほとんど役に立たなかったですけどね」


『じゃあ村まで送るか』

 とレギオン王とオシリア様は私を村まで送ろうとしたその時、


 また光が集まりなんとクリスが戻ってきた!


「え?クリス、何か忘れ物?」


 クリスはストンと椅子に座ると腕を組みこちらを見て


「爆速で今、世界中を旅してきて戻ってきたんだけど…」

 と言ったので、全員ポカーンとした。


 おい、まだ5分もかかってないんだけど!?なんならカップ麺待ってるくらいの時間だったけど!?


 一体どんな速度で世界中回ってきたの!?バカなの!?





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